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光機能性テルライト系結晶化ガラスに関する基礎的研究

氏名 金 鉉圭
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第125号
学位授与の日付 平成8年3月25日
学位論文の題目 光機能性テルライト系結晶化ガラスに関する基礎的研究
論文審査委員
 主査 教授 小松 高行
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 植松 敬三
 副査 助教授 丸山 一典
 副査 講師 斎藤 秀俊

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目次
第1章 緒言
1-1 本研究の背景 p.2
1-2 非線形光学現象とTeO2ガラス及び強誘電体結晶の特性 p.4
1-2-1 非線形光学現象とその応用 p.5
1-2-2 テルライト系ガラスと強誘電体結晶の特性 p.8
1-3 本研究に関する材料モデル p.12
1-3-1 テルライト系ガラスと強誘電体結晶の利用及び複合化 p.12
1-3-2 本研究に関する材料開発のモデル p.14
1-3-2-1 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスの第二高調波発生のモデル p.14
1-3-2-2 透明結晶化ガラスの作製 p.16
1-4 本研究の目的 p.18
1-5 本論文の構成 p.19
1-6参考文献 p.21
第2章 テルライト系ガラスの作製と諸物性
2-1 はじめに p.25
2-2 実験方法 p.26
2-2-1 ガラスの作製 p.26
2-2-2 アマルファス状態の確認 p.26
2-2-3 示差熱分析 p.27
2-2-4 密度の測定 p.28
2-2-5 誘電率の測定 p.29
2-2-6 光透過スペクトルの測定 p.29
2-2-7 屈折率測定 p.31
2-3 結果 p.31
2-3-1 テルライト系ガラスのガラス化範囲 p.31
2-3-2 テルライト系ガラスの熱的性質 p.36
2-3-3 テルライト系ガラスの光学的性質 p.38
2-3-4 テルライト系ガラスの物理的性質 p.40
2-4 考察 p.41
2-4-1 ガラス化範囲に影響を及ぼす要因 p.41
2-4-2 テルライト系ガラスの物理的性質 p.42
2-4-3 テルライト系ガラスの光学的性質 p.45
2-5 まとめ p.47
2-6 参考文献 p.49
第3章 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスの作製と諸物性
3-1 はじめに p.52
3-2 実験方法 p.53
3-2-1 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスの作製 p.53
3-2-2 LiNbO3結晶含有ガラスのX線回折、屈折率及び光透過スペクトル p.54
3-2-3 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスの誘電率 p.56
3-3 結果 p.56
3-3-1 テルライト系ガラス中のLiNbO3結晶の溶解挙動 p.56
3-3-2 テルライト系ガラス中のLiNbO3結晶の量 p.61
3-3-3 強誘電体結晶含有テルライト系ガラスの光学的性質 p.65
3-3-4 強誘電体結晶含有テルライト系ガラスの屈折率及び誘電的性質 p.67
3-4 考察 p.69
3-4-1 LiNbO3結晶の溶解における温度の影響 p.69
3-4-2 LiNbO3結晶の溶解におけるマトリックスガラスの組成の影響 p.71
3-4-3 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスの透明性 p.73
3-5 まとめ p.77
3-6 参考文献 p.80
第4章 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスファイバーの作製と諸物性
4-1 はじめに p.83
4-2 実験方法 p.88
4-3 結果 p.90
4-3-1 混合アルカリテルライトガラス中へのLiNbO3結晶の閉じ込め p.90
4-3-2 LiNbO3結晶含有混合アルカリテルライトガラスの光学的性質 p.93
4-3-3 LiNbO3結晶含有混合アルカリテルライトガラスのファイバー化 p.96
4-4 考察 p.97
4-4-1 混合アルカリテルライトガラスの光吸収 p.97
4-4-2 混合アルカリテルライトガラス中のLiNbO3結晶の量 p.99
4-4-3 テルライトガラスファイバー中におけるLiNbO3の理想的な分散状態 p.101
4-5 まとめ p.102
4-6 参考文献 p.104
第5章 透明な結晶化ガラスの作製と諸物性
5-1 はじめに p.107
5-2 実験方法 p.108
5-2-1 マトリックスガラスの作製 p.108
5-2-2 透明な結晶化ガラスの作製 p.109
5-3 結果 p.110
5-3-1 Li2O-Nb2O5-TeO2系ガラスの結晶化挙動 p.110
5-3-2 Na2O-Nb2O5-TeO2系ガラスの結晶化挙動 p.116
5-3-3 Rb2O, K2O-Nb2O5-TeO2系ガラスの結晶化挙動 p.126
5-4 考察 p.133
5-4-1 準安定結晶相の結晶系 p.133
5-4-2 結晶化ガラスの透明化 p.135
5-4-3 準安定結晶とマトリックスガラス組成との関係 p.137
5-5 まとめ p.138
5-6 参考文献 p.141
第6章 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラス及び結晶化ガラスの非線形光学特性
6-1 はじめに p.144
6-2 実験 p.144
6-2-1 第二高調波発生の定性的な評価(目視観察) p.144
6-2-2 第二高調波発生(SHG)強度の測定 p.146
6-3 結果 p.147
6-3-1 LiNbO3結晶含有Li2O-Nb2O5-TeO2系ガラスからのSHG p.147
6-3-2 LiNbO3結晶含有Li2O-Na2O-TeO2系ガラスからのSHG p.148
6-3-3 テルライト系結晶化ガラスからのSHG p.149
6-3-3-1 結晶化ガラスの定性的なSHGの観察 p.149
6-3-3-2 テルライト系結晶化ガラスのSHG強度 p.151
6-3-3-3 テルライト系結晶化ガラスの三次非線形感受率 p.152
6-4 考察 p.156
6-4-1 LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスからのSHG p.156
6-4-2 テルライト系結晶化ガラスからのSHG p.157
6-4-3 テルライト系結晶化ガラスからの三次非線形光学特性 p.163
6-5 まとめ p.164
6-6 参考文献 p.166
第7章 結論 p.168
本研究に関する発表論文 p.176
謝辞 p.178

 非線形光学材料は光ディスク、光・磁気ディスク、高速光スイッチ及び光コンピュータ等に応用することができ、将来の光情報処理システムを支える極めて重要な材料である。中でもガラス及び結晶化ガラス(ガラスセラミックス)は、成形性や加工性に優れていることから大いに期待されているが、光機能性を有する新規な材料開発は非常に遅れている。
 本研究では、線形屈折率や誘電率が大きく、しかも赤外透過性に優れるなど酸化物ガラスの中で極めて特異な性質を示すテルライト系(TeO2)ガラスに着目し、これまで全く研究例がない光機能性を有するテルライト系結晶化ガラスを創成することを目的とする。具体的には、代表的な非線形光学結晶であるLiNbO3強誘電体を含有した透明なテルライト系ガラス及びファイバーを作製し、さらに、第二高調波発生を示す透明なテルライト系結晶化ガラスを開発することであり、以下の7章から構成されている。
 第1章「緒言」では、本研究の背景、非線形光学現象の概要、テルライト系ガラス及びLiNbO3結晶の特徴、本研究における材料開発の発想(モデル)を記述し、本研究の目的と意義を明らかにした。
 第2章「テルライト系ガラスの諸物性」では、R2O-Nb2O5-TeO2系ガラス(R2O:Li2O,a2O,K2O)及びLi2O-Na2O-TeO2系ガラスを作製し、ガラス化範囲、結晶化に対する熱的安定性、屈折率及び光透過率などの基礎物性を明らかにした。特に熱的に極めて安定でかつできるだけ高屈折率を示すガラス組成を見いだし、LiNbO3結晶の分散に対して最適なテルライト系ガラスを決定した。また、選択したガラスは第二高調波の波長(Nd:YAGレーザーの基本波に対する532nm)において顕著な光吸収がないことを確認した。
 第3章「LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスの作製と諸物性」では、代表的な第二高調波発生結晶であるLiNbO3をLi2O-Nb2O5-TeO2系ガラス中に分散させ、LiNbO3結晶を含有した透明なテルライト系ガラスの作製を試みた。LiNbO3結晶のガラス中への溶解挙動を明らかにすると共に、マトリックスガラスのLi2O量が少ない場合には、LiNbO3は分散中にLiNb3O8に相変化することを見いだした。また、LiNbO3/ガラス界面の屈折率差で生じる光散乱を考慮した光透過率の式を導出し、LiNbO3結晶を含有したガラスにおけるLiNbO3量と光透過率との関係を求めた。粒径5-10μmのLiNbO3結晶を6.8wt%含有した透明なテルライト系ガラスの作製に成功し、テルライト系ガラスと強誘電体結晶との屈折率差が小さいため透明化が容易であるという発想を実証した。
 第4章「LiNbO3結晶含有テルライト系ガラスファイバーの作製と諸物性」では、LiNbO3結晶を含有したガラスファイバーの作製を試みた。熱的に極めて安定な混合アルカリテルライト系ガラス(Li2O-Na2O-TeO2)にLiNbO3結晶を分散させた後、ガラスを線引きした。ファイバー中には、粒径1-2μmのLiNbO3結晶が凝集することなく均一に分散していることを明らかにした。
 第5章「透明なテルライト系結晶化ガラスの作製と諸物性」では、様々な組成を有するテルライト系ガラスの結晶化挙動を調べ、透明な結晶化ガラスの作製を試みた。R2O-Nb2O5-TeO2系ガラス(R2O:Li2O,Na2O,K2O)においては、いずれも熱処理により立方晶の基本構造に帰属できる準安定相が初相として生成し、この準安定相からなる結晶化ガラスは光学的に可視領域で極めて透明であることを見いだした。準安定結晶の粒径が20nm程度であり、立方晶の構造を有することが透明化の原因であると結論した。透明な結晶化ガラスの密度、屈折率及び誘電率などの基礎物性を明らかにした。透明なテルライト系結晶化ガラスの開発は本研究が初めてである。
 第6章「LiNbO3結晶含有テルライト系ガラス及び結晶化ガラスの非線形光学特性」では、本研究で開発した材料の非線形光学特性をNd:YAGレーザーを用いて検討した。6wt%以上のLiNbO3結晶を含有するガラスから第二高調波の発生を確認した。K2O-Nb2O5-TeO2系結晶化ガラスからはかなり強度の強い第二高調波が発生するが、Li2O,Na2Oを含む結晶化ガラスからは発生しないことを明らかにした。結晶化ガラスにおける第二高調波発生の原因を準安定結晶の格子ひずみ及び酸素欠陥の観点から検討した。本研究で開発したテルライト系ガラス及び結晶化ガラスは、新しい光機能性材料として可能性があることを提案した。
 第7章「結論」では、本研究を総括した結論を記述した。

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