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歯当たりを考慮した等高歯ハイポイドギヤの歯切り法に関する研究

氏名 木村 仁
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第213号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 歯当たりを考慮した等高歯ハイポイドギヤの歯切り法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 教授 金子 覚
 副査 助教授 田辺 郁男

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目次
 項
主な記号 p.3

第1章 序論 p.5
1.1 研究の目的と背景 p.5
1.2 本論文の概要と構成 p.7
参考文献 p.9

第2章 歯切り理論 p.10
2.1 諸言 p.10
2.2 歯切り理論 p.12
2.3 結言 p.21
参考文献 p.22

第3章 接触点軌跡 p.23
3.1 諸言 p.23
3.2 座標系間の相互関係 p.24
3.3 接触点軌跡 p.30
3.3.1 接触点の静止空間軌跡 p.30
3.3.2 接触点の歯面上軌跡 p.34
3.4 結言 p.36
参考文献 p.37

第4章 歯当たり楕円 p.38
4.1 諸言 p.38
4.2 会線上の各点における歯当たり楕円 p.39
4.2.1 点接触かみあいをする2歯面間の歯当たり楕円 p.40
4.2.2 歯車I,IIと工具歯車IVとの相対曲線面の主方向と主曲率 p.42
4.3 触線上の各点にける歯当たり楕円 p.44
4.4 結言 p.47
参考文献 p.48

第5章 歯当たりセッティング p.49
5.1 諸言 p.49
5.2 ピニオンの歯切りセッティング p.50
5.3 ギヤの歯切りセッティング p.52
5.4 結言 p.55
参考文献 p.55

第6章 歯切り実験と歯当たり試験 p.56
6.1 諸言 p.56
6.2 歯切り実験用歯車の基本諸元と工具歯車IV p.56
6.3 歯切りセッティング p.60
6.4 歯切り実験 p.61
6.5 理論接触点軌跡と理論は当たり楕円 p.66
6.6 理論歯当たりと実際の歯当たりとの比較 p.69
6.7 工業界にける実用化例 p.72
6.8 結言 p.74
参考文献 p.74

第7章 高減速ねじ歯車への適用 p.75
7.1 諸言 p.75
7.2 高減速ねじ歯車の歯切りとかみあい p.75
7.3 歯面上接触点軌跡 p.77
7.4 理論歯当たり楕円 p.79
7.5 高減速ねじ歯車の試作 p.82
7.6 結言 p.87
参考文献 p.87

第8章 p.88
付録 媒介歯車III p.90
謝辞 p.94

 本論文は、理論的に正しくかみあい、かつ一回の歯切りでよい歯当たりが得られる共役点接触ハイポイドギヤの新しい歯切り法について、理論と実験の両面より一貫した工学的観点に立って論じたものである。
ハイポイドギヤは、食違い二軸間の動力伝達用歯車であって、主に自動車の後輪駆動用歯車として用いられている。減速比の割には小歯車を大きく作れる、歯車軸を両持ちで支持できる等、かさ歯車には見られない優れた特長を持っている。一方、ハイポイドギヤのかみあいは、平歯車やかさ歯車のそれに比べて複雑なため歯形論的扱いが格段に難しく、これが設計ならびに工作上の障害になっている。
勾配歯ハイポイドギヤの場合、厳密には、非定速比で点接触かみあいをする非共役点接触歯車になる。非共役性の程度の問題は別にして、これを認めると設計の自由度は多くなり、そのためか従来の歯切り法にはあいまいさが残されているように見受けられる。事実、歯切り現場では、よい歯当たりが得られるまで試し切りを行なうなど、今なお熟練技術者の勘に頼る部分が残されている。
こうした困難さを解消する意味で、歯を勾配歯から等高歯に改めることが提唱されているが、良好な歯当たりを得るまでには至っていない。
本論文では、共役点接触かみあいをする等高歯ハイポイドギヤの新しい歯切り法を提案する。点接触かみあいを狙う理由は、特に線接触歯車の場合に起きがちな加工・組立て誤差からくる片当たりを避けるためである。
提案する歯切り法の特長は、共役性が保証されることの他に、接触点の歯面上軌跡と歯当たり楕円の両方を、ある程度自由にコントロールできる点にある。その特長を生かすと、下記の(1)~(4)の性質を有するこれまでに例のない高性能ハイポイドギヤが得られる。
(1)共役性が完全に保証され、滑らかな回転が得られる。
(2)点接触歯車であるため、加工・組立て誤差に対して鈍感で、片当たりの心配がない。
(3)接触点の歯面上軌跡が、歯すじ曲線にほぼ一致して現れるため、かみあい率を大きくとることができる。
(4)線接触に近い点接触かみあいを行うため、歯面全体に渡って弱い歯当たりが得られる。

本論文は全8章で構成されており、各章の概要は以下の通りである。
第1章「緒論」においては、研究の背景を述べ,研究の目的および本論文の構成について述べる。
第2章「歯切り理論」においては、共役点接触かみあいをする等高歯ハイポイドギヤの新しい歯切り法を提案し、その歯切り理論について詳述する。ねじ運動をする媒介歯車IIIを工具歯車として、歯車Iおよび歯車IIの歯面を創成すれば、これら3つの歯車は同時接触線を共有することが知られている。本章で提案する新しい歯切り法は、この媒介歯車IIIを基礎に、新たに定義する純回転歯車IVを工具歯車として、一対の共役点接触歯車IとIIを創成するものである。
第3章「接触点軌跡」においては、第2章の歯切り理論により得られる点接触ハイポイドギヤがどのようなかみあいをするかについて、すなわち接触点の静止空間軌跡および歯面上軌跡について詳述する。
第4章「歯当たり楕円」においては、第2章で述べた点接触ハイポイドギヤが、各接触点まわりにどのような歯当たり楕円を形成するかについて詳述する。
第5章「歯切りセッティング」においては、第2章の歯切り理論を実際の歯切り盤上で実行する際に必要となる5つの歯切りセッティング値について詳述する。
第6章「歯切り実験と歯当たり試験」においては、5例のハイポイドギヤについて歯切り実験および光明丹による歯当たり試験を行ない、理論接触点軌跡および理論歯当たりが実際のそれらとよく一致することを示す。また、章の最後に本ハイポイドギヤの工業界における実用化例を示す。
第7章「高減速ねじ歯車への適用」においては、第2章で提案した工具歯車IVによる点接触ハイポイドギヤの歯切り理論が、他の食違い軸歯車の加工にも適用できることについて考察する。
第8章「結論」では、各章で得られた結果をまとめ、本論文を総括する。

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