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押抜加工における板材の切断特性に及ぼす工具形状の影響

氏名 村山 光博
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第292号
学位授与の日付 平成15年3月25日
学位論文題目 押抜加工における板材の切断特性に及ぼす工具形状の影響
論文審査委員
 主査 助教授 永澤 茂
 副査 教授 福澤 康
 副査 教授 古口 日出男
 副査 教授 東 信彦
 副査 新潟大学工学部 助教授 新田 勇

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目次

第1章 緒論 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 本研究の位置付け p.3
 1.2.1 従来の研究状況 p.3
 1.2.2 本研究の範囲 p.8

第2章 板紙の押抜荷重特性と糸状紙粉の発生 p.12
2.1 諸言 p.12
2.2 実験条件 p.13
 2.2.1 実験装置 p.13
 2.2.2 空打ち荷重と押込み量の関係 p.13
 2.2.3 供試材料 p.15
 2.2.4 工具切刃 p.16
 2.2.5 実験方法 p.16
2.3 実験結果および考察 p.17
 2.3.1 切断荷重応答と切断面形状 p.17
 2.3.2 糸状紙粉の形状と発生状況 p.21
2.4 諸言 p.26

第3章 アルミニウム板の押抜加工における荷重特性 p.28
3.1 諸言 p.28
3.2 実験条件 p.29
 3.2.1 供試材料の引張特性 p.29
 3.2.2 摩擦係数の測定 p.29
 3.2.3 供試材寸法 p.30
 3.2.4 工具切刃 p.31
 3.2.5 実験装置および方法 p.31
3.3 実験結果及び考察 p.32
 3.3.1 刃先幅の変化と荷重応答の関係 p.32
 3.3.2 切断過程における4段階 p.35
3.4 有限要素法解析の条件 p.36
 3.4.1 解析モデル p.36
 3.4.2 リメッシュの方法 p.38
3.5 解析結果および考察 p.39
 3.5.1 押付け段階(the pressed stage) p.39
 3.5.2 押込み段階(the pushed stage) p.42
 3.5.3 食い込み段階(the penetrated stage) p.50
 3.5.4 くびれ段階 (the necked stage) p.53
3.6 結言 p.55

第4章 アルミニウム板の押抜加工における摩擦の影響とくびれ変形特性の数値解析 p.57
4.1 諸言 p.57
4.2 有限要素解析の条件 p.58
4.3 解析結果および考察 p.60
 4.3.1 荷重特性に及ぼす摩擦係数の影響 p.60
 4.3.2 刃先幅および板厚の変化と変形形状との関係 p.62
 4.3.3 板材底面のくびれ発生挙動 p.63
 4.3.4 刃先幅および板厚の変化と荷重応答との関係 p.70
 4.3.5 荷重極小点における残留板厚の据込み挙動への移行 p.72
4.4 結言 p.74

第5章 板紙の異方性と圧縮ひずみ依存性の解析 p.76
5.1 諸言 p.76
5.2 板紙の面外圧縮試験 p.77
 5.2.1 供試材料および試験方法 p.77
 5.2.2 面外圧縮特性 p.77
 5.2.3 等価ヤング率 p.78
5.3 台形刃による板紙の切断実験 p.81
 5.3.1 供試材料 p.81
 5.3.2 実験装置および方法 p.81
5.4 実験結果および考察 p.82
 5.4.1 板紙の切断荷重応答 p.82
 5.4.2 板紙の異方性および塗工層が荷重に及ぼす影響 p.84
 5.4.3 切断荷重応答と面外圧縮特性との関係 p.87
5.5 有限要素解析の条件 p.91
 5.5.1 弾性モデル解析条件 p.91
 5.5.2 等価ヤング率の適用による圧縮ひずみ依存性の考慮 p.93
5.6 解析結果および考察 p.95
 5.6.1 等方性一定係数条件 p.95
 5.6.2 直交異方性ひずみ依存条件 p.95
 5.6.3 刃先幅の変化と応力分布との関係 p.97
 5.6.4 実験の荷重応答と数値計算との比較 p.104
 5.6.5 異方性弾性係数の変化に対する切断荷重応答の感度 p.105
5.7 結言 p.107

第6章 結言 p.110
研究業績 p.113
謝辞 p.116

平面上に置かれた板材に楔形刃を押込む切断方法は,塗工紙やシール材,樹脂板等の型抜き加工として広まってきた.また近年はリードフレームやLSIチップ絶縁薄膜等の精密部品の任意形状を切断加工する手段として型抜き加工が注目されている.しかしながら,切断過程における刃先の潰れや磨耗は,例えば,表面割れ,バリ,糸状紙粉など切断面形状品質の悪化を引き起こし,特に最近では,食品関係の包装箱中に混入する異物の原因として問題となっている.従来からこれらの現象に関する経験的,定性的な報告例はいくつかあるが,発生機構の理論的な解明はなされていない.さらに,その基礎となる先端の潰れた刃を平面上の板材に押込む場合の基礎的な切断機構に関しても報告例はほとんど無い.本研究は,いろいろな種類の板材の切断過程に対して,切断・変形特性の予測と最適な加工条件を導くための一指針を提供する.本論文は,板紙型抜における糸状紙粉発生を扱った第2章,アルミニウム板への台形刃の押込み特性を扱った第3章~第4章,板紙への台形刃の押込みと異方性弾性数値計算モデルを扱った第5章に「緒論」と「結論」を加えた構成となっている.
第1章「緒論」では型抜き加工の一般的な加工過程と工具構成を述べ,刃先の潰れとその影響に関する従来の研究状況を概観した.また,塑性力学におけるくさび押込みの基礎理論の適用範囲を示すことにより,本研究の位置付けを明確にした.その上で,本研究の目的を述べ,本論文の構成をまとめた.
第2章「板紙打抜き荷重特性と糸状紙粉発生」では,板紙の型抜き加工において糸状紙粉を発生する機械的条件を明らかにすることを目的として,刃潰れを模擬して平坦で幅が異る先端形状を持つ切刃を研磨加工にて試作し,荷重特性と板紙の切断面形状の変化ならびに糸状紙粉の生成条件について実験的に解析した.その結果,糸状紙粉の高さと刃先の幅との比が,糸状紙粉発生の主要な因子であり,糸状紙粉の発生率は室内湿度に依存するが,室内湿度の変化 44.0~56.4% に対して,最大切断抵抗および発生する糸状紙粉の幅は,ほとんど湿度の影響を受けないことを明らかにした.また,切刃に作用する荷重と切刃の押込変位との応答曲線から,糸状紙粉の有無を推定可能であることを示した.
第3章「アルミニウム板の打抜加工における荷重特性」では,アルミニウム板を被加工材として用い,刃先潰れ・磨耗を単純化したモデルとして先端に平坦部を有する切刃を板材に押込む過程において,刃先幅の変化および工具と被加工材との摩擦状態の変化が切断力や切断面形状に及ぼす影響について実験および有限要素法による数値計算によって解析した.切刃の押込み荷重応答は刃先幅に依存し,塑性体への鋭い楔の押込みとは異なることを明らかにした.
第4章「アルミニウム板の打抜加工におけるくびれ変形特性の数値解析」では,第3章で説明した数値計算モデルにおいて板材の厚さと刃先の幅を変化させた場合の荷重・変形特性から主に破断時付近の現象を解析した.最大切断荷重以降における破断近くの応答は切刃斜面のくさび効果による材料のくびれ変形に起因し,材料の板厚と刃先幅との関係,さらに接触部の摩擦がくびれ形状に影響を与えることを明らかにした.さらに,板紙の型抜き加工における糸状紙粉の発生に深く関係すると思われる刃先下の残留厚さについてその発生機構を述べた.
第5章「板紙の異方性と圧縮ひずみ依存性を考慮したFEM解析」では,板紙の切断荷重応答に関して異方性材料特性と圧縮性を伴うひずみ依存性との関係を実験的に解析した.また,切断過程における板紙の初期圧縮段階に対して,板紙の面外圧縮ひずみ依存性と直交異方弾性を考慮した数値計算モデルを構築し,実験との比較検証を行った.切刃の押込み深さと切断線荷重との関係は主に板紙の面外圧縮抵抗に依存し,板紙の面外圧縮試験から得た等価ヤング率を数値計算モデルに適用することにより,面外方向の弾性係数に対する圧縮ひずみ依存性を考慮できる.また直交異方性の弾性係数の仮定から,切断抵抗,ヤング率,切刃押込み深さ,刃先幅の関係を明らかにした.
第6章「結論」において,本研究で得られた結果をまとめ,今後の課題を述べた.

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