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港湾物流における人間-機械系の連成シミュレーションに関する研究

氏名 樋口 良之
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第201号
学位授与の日付 平成12年3月24日
学位論文の題目 港湾物流における人間-機械系の連成シミュレーションに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 伊藤 廣
 副査 教授 長谷川 光彦
 副査 教授 大里 有生
 副査 教授 中村 和男
 副査 助教授 阿部 雅二朗

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記号 p.1

第1章 緒論 p.3
 1.1 はじめに p.3
 1.2 港湾物流とシミュレーションの動向 p.7
 1.3 人間-機械系の連成シミュレーション p.10
 1.4 本研究の概要 p.12

第2章 システムのモデルとシミュレーション p.14
 2.1 緒言 p.14
 2.2 システムの分析 p.15
 2.3 待ち行列理論 p.17
 2.4 シミュレーションモデル p.20
 2.4.1 確定モデル p.20
 2.4.2 確率モデル p.23
 2.4.3 推論モデル p.25
 2.5 人間-機械系のモデリング p.31
 2.6 シミュレーション解析方法 p.33
 2.7 シミュレーション解析の精度 p.37
 2.8 結言 p.40

第3章 石炭荷役運搬シミュレーション p.41
 3.1 諸言 p.41
 3.2 荷役運搬システム p.41
 3.3 システムモデリング p.43
 3.4 積出しふ頭の事例解析に基づく検証 p.46
 3.4.1 解析対象 p.46
 3.4.2 石炭輸送及び荷役特性 p.46
 3.4.3 シミュレーション解析結果 p.50
 3.5 荷揚げふ頭の事例解析に基づく検証 p.53
 3.5.1 解析対象 p.53
 3.5.2 石炭輸送及び荷役特性 p.54
 3.5.3 シミュレーション解析結果 p.57
 3.6 バース能力の最適化 p.59
 3.7 結言 p.62

第4章 木材荷役運搬シミュレーション p.63
 4.1 緒言 p.63
 4.2 荷役運搬システム p.64
 4.3 システムモデリング p.65
 4.3.1 荷役サイクル p.65
 4.3.2 クレーン p.67
 4.3.3 ショベルローダ p.68
 4.4 事例解析に基づく検証 p.73
 4.5 結言 p.77

第5章 コンテナ最適蔵置シミュレーション p.78
 5.1 緒言 p.78
 5.2 コンテナの荷役運搬と蔵置 p.78
 5.3 コンテナ積上げ方法の確立 p.80
 5.4 事例解析に基づく検証 p.87
 5.5 結言 p.92

第6章 結論 p.93

文献 p.97

本研究に関連した発表論文 p.101
 I. 学会論文 p.101
 II.講演論文など p.102

著者が発表したその他の論文 p.104

謝辞 p.109

付録 p.111
付録.1港湾物流荷役運搬機械 p.113
 1.1 石炭荷役運搬機械 p.113
 1.2 木材荷役運搬機械 p.119
 1.3 コンテナ荷役運搬機械 p.124
 1.4 輸送機械 p.127
付録.2物流システムの調査結果 p.129
 2.1 石炭ふ頭 p.129
 2.2 木材ふ頭 p.134
 2.3 コンテナターミナル p.139
付録.3シミュレーション解析に関する資料 p.141
 3.1 モンテカルロ・シミュレーション p.141
 3.2 ファジィ理論に基づく解析 p.143

 本研究は,機械性能と情報の高度化が望まれている港湾物流システムにおいて,荷役運搬機械とふ頭構造を詳細にモデリングし,オペレータの判断に応じて機械が挙動する人間-機械系の連成したシミュレーション解析に関する機械工学と情報工学の学際領域での基礎研究である.汎用的に適用できるシステムのモデルを構築し,システム各部を連成できるシミュレーション解析方法を確立した.次に,構築したモデルを適用し,事例解析を行い,シミュレーション解析方法の妥当性を確認した.さらに,いまだ十分に解明されていない荷役運搬機械の作業性能やオペレータの判断が港湾物流システムに与える影響を明らかにし,システムの設計および運用の向上に資する情報資料を作成した.
 本論文は,全6章で構成され,第2章はシミュレーション理論について述べる.第3章から第5章では,事例解析を行い本研究の妥当性を検証し,その効果を示す.事例は,自動化の進捗と荷役運搬作業の自由度が異なる石炭,木材,コンテナといった主要な港湾物流システムである.各章の概要は以下の通りである.
 第2章では,港湾物流システムの挙動解析に必要な人間一機械系の連成シミュレーションを用いた解析方法を確立した.シミュレーションモデルは,確定モデル,確率モデル,オペレータの判断などをファジィ理論でモデリングする推論モデルを構築し,システムを構成する要素を汎用的にモデリングする.シミュレーションは,システムを後方荷役,ヤード,バースの3部分に区分し,連成させる.このシミュレーションにより,輸送機械と荷役運搬機械などの状態変化を時刻歴で把握し,統計処理することで,システムの待ち行列特性と操業特性などを解析できる.解析方法の妥当性を検証するために,解析誤差として影響を与える可能性のある確率モデルを用いる後方荷役とバース部分について単独に検証する.
 第3章では,シミュレーション解析方法を検証するために,自動化が進んでいる石炭ふ頭を対象に事例解析を行った.作業が自動化されており,オペレータが自由に判断できることが少ないため,ふ頭のモデリングには確定モデルを適用した.ふ頭全体の運営に影響を与える天候,船舶と貨車の運行などには,確率モデルを適用した.積出しふ頭と荷揚げふ頭を事例解析し,輸送機械と荷役機械の稼動特性,ヤードの貯炭特性について,解析結果と調査結果を比較し,本シミュレーション解析方法の妥当性を検証した.さらに,2つの解析対象において,バースの荷役能力が,船舶在港時間に与える影響を分析した.
 第4章では,推論モデルを検証するために,木材ふ頭の事例解析を行った.このシステムは,運搬機械オペレータの経験的な判断などの不確定な要因を多く含んでいる.このオペレータの判断について,ファジィ理論を適用した推論モデルで構築し,合理的かつ論理的なモデリングを行った.また,つり荷巻上げ,走行などの機械の作業性能を考慮し,これらの性能がシステム挙動に与える影響を解析できるシミュレーションを行った.解析結果と実地調査結果を比較し,推論モデルと人間-機械系の連成シミュレーションの妥当性を検証した.
 第5章では,人間一機械系の連成シミュレーションを用いて,コンテナターミナルにおけるスタッキングヤードでの蔵置について,輸移出コンテナを対象に検討した.ヤードヘ搬入するとき,ファジィ理論を適用したエキスパートの判断に基づきコンテナを積上げることで,最適な蔵置状態を実現する.このエキスパートによる蔵置方法と簡易蔵置方法を,シミュレーション解析によって比較する.推論モデルでモデリングされたエキスパートが,最適なコンテナ蔵置状態を実現し,スタッキングヤードでの荷役作業時間を短縮し,本船作業の時間短縮をはかることができることを明らかにした.
 第6章は,本研究の結論と総括について述べる.
 以上,本研究で得られた成果により,人間一機械系の連成したシミュレーション解析方法が確立され,港湾物流システムの機械性能と情報の高度化に対応できるものと期待される.さらに,優れたオペレータの判断をシステムに適用したコンテナターミナルの事例にあったように,機械と人間が調和したシステム構築に大きく貢献できるものと期待される.

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