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パワーフローの脈動に着目した単相-三相電力変換器の高力率・小形化に関する研究

氏名 芳賀 仁
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第318号
学位授与の日付 平成16年8月31日
学位論文題目 パワーフローの脈動に着目した単相-三相電力変換器の高力率・小形化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 大石 潔
 副査 教授 近藤 正示
 副査 助教授 野口 敏彦
 副査 助教授 伊東 淳一
 副査 佐藤 之彦

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目次

第1章 序論
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 研究の目的 p.4
 1.3 論文の概要 p.6
 参考文献

第2章 単相-三相電力変換器のパワーフローに着目した高力率・小形化
 2.1 緒言 p.11
 2.2 単相整流器の高力率化の手法 p.13
 2.2.1 高力率化の必要性 p.13
 2.2.2 整流器の高力率化の原理 p.15
 2.2.3 パッシブフィルタ方式による高力率化 p.15
 2.2.4 アクティブフィルタ方式による高力率化 p.20
 2.3 単相-三相電力変換のパワーフロー p.23
 2.3.1 単相および三相の瞬時電力 p.23
 2.3.2 直流バス(変換器内部)で単相電力脈動を補償する方法 p.25
 2.3.3 交流電力側で単相電力脈動を補償する方法 p.29
 2.4 パワーフローに着目した単相-三相電力変換器の高力率・小形化 p.29
 2.4.1 単相整流器の簡単な高力率化の手法 p.29
 2.4.2 モータの慣性モーメントを利用した単相電力脈動の補償 p.36
 2.4.3 単相-三相電力変換器の小形化 p.38
 2.4.4 負荷モータへ単相電力脈動を与える電力変換器構成 p.40
 2.5 本研究の位置付け p.42
 2.6 結言 p.45
 参考文献

第3章 IPMモータの弱め磁束を利用した高入力力率インバータシステム
 3.1 緒言 p.49
 3.2 従来の高力率整流器/インバータ回路 p.50
 3.3 提案システムおよび制御原理 p.54
 3.3.1 提案システムのインバータ制御に関する留意点 p.54
 3.3.2 IPMモータの弱め磁束を用いた直流バス電圧低下法 p.56
 3.4 制御回路ブロック図 p.62
 3.4.1 IPMモータのd-q変換モデル p.62
 3.4.2 提案するインバータ制御法 p.66
 3.5 実験結果 p.71
 3.6 結言 p.78
 参考文献

第4章 高力率ダイオード整流を有するインバータシステムの入力電流制御法
 4.1 緒言 p.83
 4.2 ディザー効果を用いた高力率整流器の解析 p.84
 4.2.1 昇圧形高力率整流器 p.86
 4.2.2 高圧形高力率整流器 p.88
 4.2.3 シミュレーション結果 p.88
 4.3 制御回路ブロック図 p.92
 4.3.1 IPMモータの直接トルク制御法 p.92
 4.3.2 提案する制御回路ブロック図 p.98
 4.4 実験結果 p.103
 4.5 結言 p.107
 参考文献

第5章 高入力力率を実現する単相-三相マトリクスコンバータへの応用
 5.1 緒言 p.111
 5.2 単相-三相マトリクスコンバータの回路構成 p.112
 5.3 単相-三相マトリクスコンバータの制御法 p.115
 5.3.1 提案する仮想電力変換器を用いた制御法 p.115
 5.3.2 スイッチングパターンの演算法 p.117
 5.4 制御回路ブロック図 p.120
 5.5 実験回路および実験結果 p.122
 5.6 結言 p.126
 参考文献

第6章 結論
 6.1 本研究の成果 p.133
 6.2 各システム・制御法の比較 p.138
 6.3 今後の課題 p.141
謝辞
発表論文

本論文は,単相電源を有する三相インバータシステムの小形化,高力率化の提案を目的としている。用途を限定して電源から負荷までを一括してシステムを設計することで,これまでAC-AC電力変換器を構築する上で主流とされている直流バス電圧一定という概念を捨てることを行っている。電源から負荷までを巨視的な立場から見直すことでリアクトル,電解コンデンサレス化を実現しており,本提案の小形化・高力率化を実現する手段として,新しい高力率整流器の回路構成とインバータ制御法の提案を行っている。さらに,小形化・高力率化を実現する手段として単相-三相電力変換器の構成についても検討しており,単相-三相マトリクスコンバータの提案も行っている。
 本論文は全6章から構成している。各章の内容は以下の通りとなっている。
 第1章「序論」では,本論文の序章として研究の背景について述べている。次に,従来の電力変換器に用いられている技術を説明しており,改善すべき問題点を提示している。本論文で対象とするシステムと研究目標はここで掲げられる。また,本論文の概要として章の構成についても述べている。
 第2章「単相-三相電力変換器のパワーフローに着目した高力率・小形化」では,単相電源を有する電力変換器の小形化の手法と高力率化の手法を議論している。先ず,整流器の高力率化の手法を議論しており,従来の高力率整流器の高力率化の原理を解析している。第2章では整流器の直流側出力電圧波形に着目して解析を行っており,新たに高力率単相整流器の手法も提案している。次に,電力変換器の小形化について電源,負荷を含めた入出力間および変換器内部のパワーフローと,エネルギー蓄積要素の接続位置に着目して議論している。電源から負荷までを一体化して議論することで,単相電力脈動を負荷モータへ供給するシステムを提案している。そして,単相電力脈動による負荷モータの速度制御における影響や,本手法の適用可能なシステムについても言及している。第2章で提案した高力率化と小形化の手法を実現する単相-三相電力変換器の構成についても提案しており,それぞれの特徴について述べている。最後に,本論文の研究の位置付けについて述べている。
 第3章以降は,第2章で提案した小形化,高力率化を実現するシステムについて,実験結果を中心にその有用性を明らかにしている。
 第3章「IPMモータの弱め磁束を利用した高入力力率インバータシステム」では,第2章で提案した高入力力率化と小形軽量化を実現するAC-DC-AC電力変換に基づく構成とインバータ制御法について提案している。IPMモータのベクトル制御に基づいてインバータ制御アルゴリズムが構築されており,q軸電流制御系でトルク脈動を発生させ,そしてd軸電流制御系により弱め磁束制御を利用したインバータ出力端子電圧低下法が提案されている。実験よりIPMモータが4000[r/min],2[Nm]駆動において入力力率95.4%を得ている。最高入力力率は97.3%を得ており,従来の単相ダイオード整流回路における55.0%と比べて大幅に改善しており,さらにリアクトル,電解コンデンサレス,チョッパ回路レス化を実現している。弱め磁束を用いるためモータ効率は従来方式より4.9%下がっているが,変換器効率は4.2%改善しているため,システム全体からみた総合効率は0.7%の低下になると評価している。実験結果と評価より,提案法はエアコン用コンプレッサへの適用が有効であることを明らかにした。
 第4章「高力率ダイオード整流を有するインバータシステムの入力電流制御法」では,第3章で提案したシステムの高性能化と位置付けて,入力電流波形改善法を提案している。第4章は,入出力の瞬時電力を制御アルゴリズムに取り込むことで,第3章では困難であったIPMモータの軽負荷駆動時における力率改善を実現している。先ず,提案する力率改善効果はディザー効果を用いて解析しており,シミュレーション結果より検証している。次に,力率改善の原理を提案システムに適用し,IPMモータの直接トルク制御法に基づく三相インバータの制御法を提案する。提案方式は実験より,2700[r/min],420[W]動作時で入力力率98.8%を達成しており,実質的に入力力率1制御が実現している。この結果は第3章で述べた方式による同条件の62.8%と比べて大幅に改善することができており,提案システムの高性能化として,十分な成果を得ることができている。
 第5章「高入力力率を実現する単相-三相マトリクスコンバータへの応用」では,双方向スイッチ回路を用いた単相-三相マトリクスコンバータの検討と,制御法について提案している。スイッチング素子の制御法は,仮想電力変換器を用いて提案しており,実験結果より入力力率97.6%と,直接トルク制御に基づくIPMモータの速度制御特性が得られている。これは,仮想電力変換器を利用したスイッチングパターンの構築が,入力力率1制御ならびにIPMモータの速度制御を同時に実現していることを示している。実験結果から高入力力率化を実現する単相-三相マトリクスコンバータの有用性を確認できた。
 第6章「結論」では,本論文の結論として,各章で検討されている単相-三相電力変換器に対する総括を行っている。さらに,本研究で残された幾つかの課題についても言及している。

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