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ナノインデンテーション試験結果の解析法とそれによる各種材料表面の評価

氏名 澤 健司
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第243号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 ナノインデンテーション試験結果の解析法とそれによる各種材料表面の評価
論文審査委員
主査 教授 田中 紘一
副査 教授 古口 日出男
副査 助教授 安井 孝成
副査 助教授 井原 郁夫
副査 独立行政法人物質・材料研究機構材料情報ステーション 副ステーション長 松岡 三郎

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1 序論 p.1
1.1 はじめに p.1
1.2 規格化の現状 p.3
1.2.1 ISO14577の原案について p.3
1.2.2 インデンテーションに用いられる圧子 p.4
1.2.3 P-h曲線より求められる力学量 p.5
1.2.4 マシーンコンプライアンスの補正 p.11
1.2.5 面積関数の補正 p.12
1.3 本論文の概要 p.13
 参考文献 p.15
2 簡便なナノインデンテーション試験結果の解析法確立と試験機の性能調査 p.17
2.1 緒言 p.18
2.2 解析法 p.19
2.3 ナノインデンテーション試験 p.21
2.3.1 試料 p.21
2.3.2 試験機と試験条件 p.23
2.4 実験結果 p.25
2.5 補正値 p.25
2.5.1 マシーンコンプライアンスと補正長さの決定 p.25
2.5.2 ヤング率と硬度の統計学的検討 p.28
2.6 予荷重による補正長さ p.37
2.7 結言 p.41
 参考文献 p.45
 付録A p.47
 付録B p.53
 付録C p.55
 付録D p.57
3 天然ダイヤモンドのナノインデンテーション p.59
3.1 緒言 p.60
3.2 ナノインデンテーション試験 p.61
3.3 解析法 p.64
3.4 解析結果と考察 p.67
3.5 結言 p.70
 参考文献 p.73
4 10nm極薄膜のナノインデンテーション p.75
4.1 緒言 p.76
4.2 FEM解析 p.76
4.3 ナノインデンテーション試験 p.77
4.4 解析結果 p.78
4.5 実験結果と考察 p.82
4.6 結言 p.85
 参考文献 p.87
5 ナノインデンテーションによる研磨ガラス表面改質層の測定 p.89
5.1 緒言 p.90
5.2 実験 p.90
5.3 ナノインデンテーション試験結果 p.91
5.4 考察 p.92
5.5 結言 p.94
 参考文献 p.97
6 ナノインデンテーションによる各種Ni-Pメッキ皮膜の評価 p.99
6.1 緒言 p.100
6.2 ナノインデンテーション試験 p.100
6.3 試験結果 p.101
6.4 弾性表面波による測定 p.103
6.5 考察 p.104
6.6 結言 p.106
 参考文献 p.107
7 総括 p.109
 謝辞 p.111
 発表論文 p.113

 ヴィッカース硬さ試験の一種であるナノインデンテーションに関する研究を行った。本手法は圧子を試料表面に深さナノメートルオーダーで押し込み、その押し込み過程において、荷重と変位を逐一測定して荷重ー変位曲線(P-h曲線)を得る。そして得られた曲線を解析することによって試料表面の硬度や弾性定数などを求める手法である。最近では、薄膜や脆性材料あるいは表面改質層などの表面強度評価法として、研究機関や企業の開発部門で多く用いられている。しかしながら、P-h曲線の解析法は現在のところ規格化には至っておらず、これに関しての国際規格化を、ISO/TC164/SC3において検討されているが、原案(IS0/DIS14577)が作成されているに留まっている。本研究では第一に、現在、規格化すべく検討されている試験結果の解析法の問題点を指摘し、より簡便かつ物理的な意味のある解析法を開発した。また、種々のナノインデンテーション試験機を用いて、いくつかの標準試料を測定することにより、提案した解析法の妥当性についても検討した。第二に、現在のところ測定が困難、あるいは測定されていない材料に対し試験を行い、硬度やヤング率などの機械的性質を評価した。具体的には以下のことを行った。
1. 4種類の標準試料を6種類のタイプの異なる試験機で測定し、ナノインデンテーション試験結果より材料の硬度や弾性率を簡便に算出する手法および補正法をOliverとPharrの理論に基づいて開発した。提案した手法において、補正項はフレームのコンプライアンス,Cfおよび補正長さ,ΔhCのただ2つで、後者は圧子先端切断長さと押し込み開始時の予荷重により測定開始時に既に押し込まれている深さの和に等しい。実際の補正は、得られた深さにΔhC値を加えることによって行う。ΔhC値は試料によって変化し、柔らかい材料ほど大きくなることを確認した。0liverとPharrは圧子と試料の接触面積, Aを8次の多項式で近似することにより補正し、補正値が圧子形状のみによって決定されるとしているが、8個の未知数には物理的な意味がないのに対し、本手法のように、圧子の切断長さや測定開始時において既に押込まれている深さを測定した深さに加える方法は感覚的に分かりやすいといえる。さらに、ΔhC値が硬度に依存することを考慮すると、簡便に補正値を定めることが可能であるという点で、本研究により提案された手法のほうが有効であると言える。
2. 重量最小0.01カラットの天然ダイヤモンドの弾性常数をナノインデンテーション法により求めた。測定結果は弾性挙動を呈し、FEMシミュレーション結果を援用して曲線の解析を行ったところ、<lOO>方向のPlane strainのヤング率, E*は1090GPaと算出された。また、この値が文献値と誤差2.4%で一致していることを確認した。
3. ナノインデンテーションを用いて膜厚10nmDLC(Diamond like carbon)薄膜の弾性率評価を試みた。測定は荷重分解能O.1μN、変位分解能0.1nmを有する変位制御型の試験機を用いて最大押し込み深さ10nm以下で行った。得られた荷重-変位曲線の解析は三次元有限要素法(FEM)シミュレーション結果を援用して行い、圧子先端切断長さと下地(CoCrTa磁性層)の影響を考慮して膜単体の弾性率の概算に成功した。
4. 表面を研磨したガラス(光学ガラス)とフュージョン法で作製された無研磨ガラス(アルミノシリケートガラス)表面に対してナノインデンテーション試験を行った。得られた。P-h曲線の解析より、光学ガラスは表面層6nmが軟化していることを確認した。また、両試料に対して光電子分光(Photoelectron spectroscopy, XPS)分析を行うと、光学ガラス表面においてO-H結合のピークが見られ、このO-H結合による層が軟化の原因であると結論付けた。
5. 第6章では、ナノインデンテーションによりNi-PおよびSiC粒子分散Ni-Pメッキ皮膜の評価を行った。本研究の目的の一つは、ナノインデンテーションによって求められた弾性常数が、他の手法によって求められたものとどの程度一致するか調査することであるが、他の手法の一つとして、弾性表面波によって同一の試料のヤング率を測定した。結果、いずれの手法においてもSiCを分散させるとヤング率および硬度が上昇することが分かり、ヤング率の絶対値は誤差4%以内で一致することが確認できた。

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