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油中水型乳化物を利用したアルミナ多孔体及びSiC,Si3N4ウイスカーの研究

氏名 音石 真二
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第183号
学位授与の日付 平成14年3月25日
学位論文題目 油中水型乳化物を利用したアルミナ多孔体及びSiC,Si3N4ウイスカーの研究
論文審査委員
 主査 教授 石崎 幸三
 副査 教授 小松 高行
 副査 助教授 斎藤 秀俊
 副査 助教授 南口 誠
 副査 新潟大学工学部 助教授 堀田 憲康

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第1章 序論 p.1-p.20
1.1 研究の背景 p.1
1.2 既往の多孔体の用途及び製造方法 p.2
1.2.1 多孔体の用途 p.2
1.2.2 セラミックス多孔体の製造方法 p.4
1.2.3 油中水型乳化物を利用した多孔体 p.6
1.2.4 本研究の第一の研究課題とその解決手段 p.8
1.3 既往のウイスカーの用途及び製造方法 p.9
1.3.1 ウイスカー及びその用途 p.9
1.3.2 SiCウイスカーの製造方法 p.10
1.3.3 Si3N4ウイスカーの製造方法 p.11
1.3.4 本研究の第二の研究課題とその解決手段 p.12
1.3.5 SiCウイスカーの成長速度と成長形態 p.14
1.3.6 SiCウイスカーの生成触媒 p.15
1.4 論文の構成と内容要旨 p.16
図表 p.17-p.20
第2章 油中水型乳化物を利用したアルミナ多孔体 p.21-p.43
2.1 緒言 p.21
2.2 アルミナ多孔体の製造 p.22
2.2.1 実験方法 p.22
2.2.2 実験結果 p.23
2.2.3 考察 p.24
2.3 アルミナ多孔体の気孔率と機械的強度 p.26
2.3.1 測定方法 p.26
2.3.2 実験結果 p.27
2.3.3 考察 p.27
2.4 分散相にセルロースエーテル水溶液を用いたアルミナ多孔体の製造 p.28
2.4.1 実験方法 p.28
2.4.2 実験結果 p.29
2.4.3 考察 p.30
2.5 結言 p.31
図表 p.33-p.43
第3章 油中水型乳化物を利用したSiCウイスカー p.44-p.65
3.1 緒言 p.44
3.2 実験 p.44
3.2.1 原料 p.44
3.2.2 多孔質重合体の作製 p.45
3.2.3 多孔質重合体の加熱処理 p.45
3.2.4 加熱処理物からのウイスカーの分離 p.45
3.3 測定 p.46
3.4 結果 p.46
3.4.1 生成物のSEM観察 p.46
3.4.2 生成物の粉末X線回折測定及び透過型電子顕微鏡観察 p.47
3.4.3 ポリカルボシランの熱分解反応 p.47
3.5 考察 p.49
3.6 結言 p.52
図表 p.54-p.65
第4章 SiCウイスカーの成長速度と成長形態 p.66-p.79
4.1 緒言 p.66
4.2 実験 p.67
4.2.1 多孔質重合体の作製 p.67
4.2.2 多孔質重合体の加熱処理 p.67
4.2.3 ウイスカーの長さ方向の成長速度の算出 p.67
4.3 結果 p.67
4.3.1 成長時間とウイスカーの長さの関係 p.67
4.3.2 ウイスカーの成長速度 p.68
4.3.3 ウイスカーの形態観察 p.68
4.4 考察 p.68
4.5 結言 p.71
図表 p.73-p.79
第5章 SiCウイスカーの生成における生成触媒の効果 p.80-p.95
5.1 緒言 p.80
5.2 金属不純物の由来源の特定 p.80
5.3 SiCウイスカーの生成触媒の選定 p.81
5.3.1 実験 p.81
5.3.2 結果及び考察 p.82
5.4 生成触媒としてNiFe2O4を用いたSiCウイスカーの生成 p.84
5.4.1 実験 p.84
5.4.2 測定 p.84
5.4.3 結果 p.84
5.4.4 考察 p.86
5.5 結言 p.88
図表 p.89-p.95
第6章 油中水型乳化物を利用したSi3N4ウイスカー p.96-p.112
6.1 緒言 p.96
6.2 実験 p.96
6.2.1 多孔質重合体の作製 p.96
6.2.2 多孔質重合体の加熱処理 p.96
6.3 測定 p.97
6.4 結果 p.97
6.4.1 生成物のSEM観察 p.97
6.4.2 生成物の粉末X線回折測定及び透過型電子顕微鏡観察 p.97
6.4.3 Si3N4ウイスカーのα相の含有率の測定 p.97
6.4.4 赤外吸収スペクトルの変化 p.98
6.5 考察 p.99
6.6 結言 p.103
図表 p.105-p.112
第7章 結論 p.113-p.116
7.1 本研究で得られた知見 p.113
7.2 本研究の工業的価値,及び今後の研究課題と展望 p.115
参考文献 p.117-p.122
研究業績リスト p.123-p.124

 セラミックス多孔体は,濾過材,断熱材,触媒担体,吸音材などに盛んに利用され,利用形態に応じ種々の製造方法が開発されている.本論文では,第一に,容易に気孔率を広い範囲で調整でき,しかも,均一な気孔分布を有するセラミックス多孔体の製造方法の開発を目的とし,油中水型乳化物を利用したアルミナ多孔体の製造方法について検討した.
 一方,セラミックスウイスカーは,プラスチックス,金属,セラミックスなどの複合材料の強化材として注目されている.なかでも,SiC,Si3N4ウイスカーは優れた耐熱性,耐食性のため,その実用化へ向けて数多くの研究がなされている.しかしながら,SiC,Si3N4ウイスカーの利用は,製造効率が低く高価であることから付加価値の高い部材に限られている.本論文では,第二に,ウイスカーを簡単な装置で効率良く製造する方法の開発を目的とし,油中水型乳化物を利用したSiC,Si3N4ウイスカーの製造方法について検討した.
 本論文は7章より構成され,各章の内容は以下のとおりである.
 第1章では,本研究の背景,研究課題とその解決手段,及び研究の概要を述べた.
 第2章では,油中水型乳化物を利用したアルミナ多孔体の製造について検討した.連続相として重合性有機化合物を用い,連続相にアルミナ粉末を高充填した油中水型乳化物を調製し加熱重合した後,分散相である水を乾燥により除去し連続性多孔質重合体を得た.この多孔質重合体を焼成しアルミナ多孔体を得た.アルミナ多孔体中には,分散相である水の蒸発により形成された気孔に由来する3μm前後の気孔が存在した.ポロシメーターによる平均気孔径は均一で1μm前後であった.アルミナ多孔体の気孔率は,油中水型乳化組成物中の水の添加量及び焼成温度を変えることにより,約40~80%の範囲で調整できた.
 第3章では,油中水型乳化物を利用したSiCウイスカーの製造について検討した.油中水型乳化物を利用し,ポリカルボシラン(PCS)及びミルド炭素繊維(MCF)を含有する連続性多孔質重合体を調整した.この多孔質重合体をアルゴン雰囲気中1100℃以上で加熱処理することにより,その内部及び表面に結晶性の良好なβ-SiCウイスカーが生成した.1350℃で5時間加熱処理して得られたウイスカーの収率は87.4mol%であった.ウイスカーの先端に球状物が付着していることから,ウイスカーの成長機構はVLS機構であると推定した.PCSの熱分解過程,加熱処理物の化学分析から,SiCウイスカーの生成反応は,シリカ還元法に類似したものであると推定した.
 第4章では,SiCウイスカーの成長速度と成長形態について検討した.加熱温度1100~1300℃における1時間までの成長時間とウイスカーの長さの間には,ほとんど直線関係があった.しかし,成長時間が1時間以上になると,1100~1250℃では成長が停止し,1300℃ではウイスカーの長さが短くなった.ウイスカーの成長の停止は,成長機構がVLS機構からVS機構へと変化したためと推定した.加熱時間とウイスカーの長さの関係からウイスカーの成長速度を求め,VLS機構によるSiCウイスカーの成長に関する活性化エネルギー 80.9kJmol-1が得られた.1300℃では,VLS機構及びVS機構によるウイスカーの生成反応が同時に起こっているものと推定した.
 第5章では,SiCウイスカーの生成触媒の効果について検討した.生成触媒としてNiFe2O4を用いたところ,良好なβ-SiCウイスカーが生成した.一方,NiFe2O4を添加しない場合,β-SiCからなるヌードル状物が生成した.ウイスカーは生成初期から高い結晶性を有するものとして成長したのに対し,ヌードル状物は生成初期ではウイスカーに比べ結晶性の低いものとして生成し,加熱処理温度と共に結晶性が高くなることが確認された.
 第6章では,油中水型乳化物を利用したSi3N4ウイスカーの製造方法について検討した.SiCウイスカーの生成に用いた多孔質重合体を窒素気流中で加熱処理すると,1200℃以上でその表面及び内部にα相が90%以上である結晶性の良好なSi3N4ウイスカーが生成した.1400℃で5時間加熱処理して得られたウイスカーの収率は66.6mol%であった.ウイスカーは,生成の初期においてはVLS機構により棒状のウイスカーとして成長し,1300℃付近からVS機構により幅方向に成長しテープ状のウイスカーに変化した.PCSの熱分解過程,加熱処理物の化学分析から,Si3N4ウイスカーの生成反応はシリカ還元窒化法に類似したものであると推定した.
 第7章は結論であり,各章で得られた結果を要約し,今後の検討課題について述べた.

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