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引張り応力を考慮した不飽和粘性土の破壊とひずみ軟化特性

氏名 中村 公一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第313号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 引張り応力を考慮した不飽和粘性土の破壊とひずみ軟化特性
論文審査委員
 主査 教授 杉本 光隆
 副査 教授 海野 隆哉
 副査 助教授 大塚 悟
 副査 助教授 豊田 浩史
 副査 長野工業高等専門学校 教授 阿部 廣史

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 はじめに p.2
1.2 既往の研究 p.5
 1.2.1 はじめに p.5
 1.2.2 引張り強度の測定 p.5
 1.2.3 不飽和土の定義 p.11
 1.2.4 不飽和土のせん断強度の推定 p.11
 1.2.5 水分特性 p.14
1.3 本研究の目的 p.16

第2章 試験装置・試験方法と飽和土の力学特性 p.17
2.1 試験装置・試験方法 p.18
 2.1.1 はじめに p.18
 2.1.2 三軸試験 p.21
 2.1.3 中空ねじりせん断試験 p.30
 2.1.4 リングせん断試験 p.36
 2.1.5 孔内ねじりせん断試験装置 p.40
 2.1.6 加圧板法 p.43
 2.1.7 供試体作製方法 p.49
2.2 飽和度の力学特性 p.52
 2.2.1 使用した試料の物性値 p.52
 2.2.2 三軸試験 p.53
 2.2.3 中空ねじりせん断試験 p.57
 2.2.4 リングせん断試験 p.65
 2.2.5 孔内ねじりせん断試験 p.68

第3章 不飽和土の力学特性 p.71
3.1 はじめに p.72
3.2 水分特性曲線 p.72
3.3 不飽和三軸試験 p.73
 3.3.1 試験ケース p.73
 3.3.2 排水条件の影響 p.75
 3.3.3 応力経路の影響 p.75
 3.3.4 サクション履歴の影響 p.79
3.4 不飽和中空ねじりせん断試験 p.82
 3.4.1 せん断速度に関する検討 p.82
 3.4.2 試験ケース p.84
 3.4.3 サクションの影響 p.86
 3.4.4 pnetの影響 p.91
 3.4.5 b値の影響 p.99
 3.4.6 間隙比変化 p.103
 3.4.7 飽和度・含水比変化 p.110
3.5 不飽和リングせん断試験・不飽和孔内ねじりせん断試験 p.112
 3.5.1 試験ケース・試験条件 p.112
 3.5.2 ピーク強度の検討 p.112
 3.5.3 残留強度の検討 p.117

第4章 不飽和土の破壊規準とひずみ軟化特性 p.123
4.1 はじめに p.124
4.2 応力経路・排水条件・サクション履歴が破壊規準に与える影響 p.125
 4.2.1 応力経路の影響 p.125
 4.2.2 排水条件の影響 p.127
 4.2.3 サクション履歴の影響 p.128
4.3 引張り応力が破壊規準に与える影響 p.130
 4.3.1 引張り応力を考慮しない破壊規準の適応性 p.130
 4.3.2 供試体破壊状況 p.133
 4.3.3 せん断面の角度に関する考察 p.134
 4.3.4 最小主応力変化状況 p.136
 4.3.5 引張り応力を考慮した破壊規準 p.138
4.4 中間応力が破壊規準に与える影響 p.140
 4.4.1 最小主応力変化状況 p.140
 4.4.2 b値が異なる場合の引張り応力を考慮した破壊規準 p.143
 4.4.3 π面で表したMohr-Coulombの破壊規準 p.146
4.5 ひずみ軟化特性 p.149
 4.5.1 残留強度特性 p.151

第5章 不飽和土のモデル化と斜面安定解析例 p.155
5.1 不飽和土のモデル化 p.156
 5.1.1 はじめに p.156
 5.1.2 引張り応力の影響 p.157
 5.1.3 中間主応力の影響-粘着力 p.158
 5.1.4 サクションの影響-粘着力 p.165
 5.1.5 ダイレイタンシー角Φd p.165
 5.1.6 ひずみ軟化 p.165
5.2 有限差分法を用いた斜面安定解析例 p.167
 5.2.1 はじめに p.167
 5.2.2 解析条件 p.169
 5.2.3 引張り応力の影響 p.171
 5.2.4 中間主応力により粘着力を変化させた影響 p.173
 5.2.5 ひずみ軟化の影響 p.175
 5.2.6 ひずみ軟化量の影響 p.177
 5.2.7 弾性係数の影響 p.179
 5.2.8 粘着力を分布させた影響 p.181
 5.2.9 まとめ p.183

6.1 はじめに p.186
6.2 各章のまとめ p.186
参考文献 p.188
記号一覧 p.191
謝辞 p.194

本研究は,不飽和土の破壊メカニズムを解明するために,様々な室内要素試験を実施し,三次元応力状態下においてサクションが不飽和土の破壊特性に与える影響を考察したものである.
我が国のように降雨の多い地域では地下水位も総じて高く,飽和土に関する研究は盛んに行われてきている.しかしながら,不飽和土は飽和土より安全側ということで,飽和土の特性を準用することも多い.我が国で不飽和土が問題となるのは,降雨や地震時に発生する斜面崩壊などである.したがって,地盤表層付近の低拘束圧領域における不飽和土の破壊特性が重要となってくるが,これらは国内外でも行われた例がほとんどないのが現状である. そこで本研究では,不飽和土でも低拘束圧で破壊が起こり,せん断中に引張り応力が作用する状態の力学挙動の解明を目指す.また,得られた知見を基に不飽和土のモデル化を行い,有限差分法による斜面安定解析を実施し,既存のモデルに比べ,新たなモデルが解析結果にどのような影響を与えるか検討した.
本論文は,「引張り応力を考慮した不飽和粘性土の破壊とひずみ軟化特性」と題し,6章より構成されている.第1章では,不飽和土の基礎的理論を説明するとともに,不飽和土の破壊規準についての既往の研究成果をまとめている.さらに,以上のことを基に,本研究の背景と目的を述べている.
第2章では,本研究で用いる試験装置とその自動計測・自動制御方法について詳細に述べている.さらに実験方法や供試体作製方法についても説明している.特に,室内において均質な不飽和供試体を作製するための圧密,脱水方法について言及している.
第3章では,不飽和土のせん断特性に影響を及ぼす因子を明らかにするために,排水条件,サクション,基底応力,中間主応力係数,応力経路,サクション履歴を変化させて実験を行った.特に引張り応力が発生する低拘束圧領域については詳細に検討した.
第4章では,第3章の実験結果を用いて - 平面における破壊規準について検討した.
既往の研究と同様に,サクションの増加による強度増加は,粘着力の増減としてあらわれた.不飽和土における破壊強度は,破壊時のサクションと基底応力で決定され,排水条件・せん断時の応力経路・サクション履歴に影響されないことがわかった.また,中空ねじりせん断試験により,不飽和土にはせん断破壊と引張り破壊の二種類の破壊モードが存在することを示した.この異なる破壊モードを考慮し,既往の破壊規準(せん断破壊)に (引張り破壊)を追加することで,不飽和土の新たな破壊規準を提案した.以上より導かれる,引張り破壊を考慮した - 平面における破壊規準式が,すべての応力状態において,実験結果と一致することを示した.さらに,不飽和土の粘着力は,せん断抵抗角と同様に中間主応力に依存することと,破壊後にひずみ軟化が起こると,ひずみ軟化後の終局強度はサクションによらないことを示した.
第5章では,第4章の研究成果を受け,不飽和土のモデル化を行った.新たにモデル化を行ったのは,引張り破壊の導入,せん断抵抗角と粘着力の中間主応力依存性,ひずみ軟化挙動,非線形弾性係数の4つである.これらのモデルを用いて有限差分法による斜面安定解析を行い,新たに作成したモデルが解析結果に与える影響について検討した.従来モデルと比較して,新たなモデルを用いた場合,破壊時の粘着力が増加した.これは,従来のモデルでは,不飽和斜面の安定性を過大に評価しすぎることを示している.すべての解析結果において,斜面のり尻付近よりせん断ひずみの集中が起こり,このひずみ集中はのり肩方向に進展した.引張り破壊を考慮した場合,斜面のり尻からのせん断ひずみが十分集中した後,のり肩からテンションクラックと考えられるひずみの発生が確認できた.
第6章では,本研究を総括し,本研究で得られた知見をまとめた.さらに,今後の検討課題を示した.以上のように,本研究では,不飽和土の破壊特性について詳細に検討し,特に低拘束圧領域にける新たな破壊規準を提案した.

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