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道路交通騒音の実用的低減手法に関する研究

氏名 島 広志 
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第204号
学位授与の日付 平成15年6月18日
学位論文題目 道路交通騒音の実用的低減手法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 助教授 宮木 康幸
 副査 助教授 高橋 修
 副査 助教授 太田 浩之
 副査 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 教授 横山正明

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目次

1 序論 p.1
1.1 はじめに p.1
1.2 本研究の目的 p.3
1.3 各章の内容 p.4
2 タイヤ道路騒音 p.7
2.1 本章の概要 p.7
2.2 タイヤ騒音の発生メカニズム p.8
2.2.1 タイヤの構造と種類 p.8
2.2.2 タイヤ騒音の発生メカニズム p.9
2.3 パターン溝共鳴音 p.11
2.3.1 メカニズム p.11
2.3.2 測定例 p.11
2.3.3 タイヤにおける対策 p.17
2.3.4 舗装からの対策 p.17
2.4 タイヤ振動音 p.19
2.4.1 メカニズム p.19
2.4.2 測定例 p.19
2.4.3 タイヤにおける対策 p.22
2.4.4 舗装からの対策 p.23
2.5 タイヤの低騒音化の現状 p.24
2.6 まとめ p.25

3 低騒音舗装 p.27
3.1 本章の概要 p.27
3.2 低騒音舗装の騒音低減効果 p.28
3.2.1 騒音低減効果と舗装厚さ,骨材粒径の関係 p.28
3.2.2 特徴とメカニズム p.33
3.3 ポーラス・アスファルトの音響特性 p.37
3.3.1 ポーラス・アスファルトの吸音特性 p.37
3.3.2 吸音のメカニズム p.38
3.4 低騒音舗装の評価方法について p.39
3.4.1 試験車両を用いた単独走行通過騒音測定 p.39
3.4.2 実際の交通流に対する測定 p.39
3.4.3 タイヤ接近音による低騒音舗装の評価 p.43
3.4.4 気象の影響 p.46
3.5 本章のまとめ p.48
4 遮音壁1 単一遮音壁上部の傾斜は回折音に及ぼす影響 p.50
4.1 本章の概要 p.50
4.2 遮音壁頂部の傾斜の影響 p.51
4.2.1 境界要素法による遮音壁の計算 p.51
4.2.2 道路の片側に遮音壁の場合 p.51
4.2.3 道路の両側が遮音壁の場合 p.56
4.3 傾斜による回折音変化のメカニズム p.59
4.4 遮音壁頂部の改良 p.63
4.5 まとめ p.65

5 遮音壁2 2重Y型遮音壁の開発 p.67
5.1 本章の概要 p.67
5.2 これまでの石端変形型遮音壁 p.68
5.3 低騒音舗装と遮音壁 p.71
5.4 2重Y型遮音壁の音響特性 p.73
5.4.1 Y型遮音壁の音響特性 p.73
5・4・2 2重Y型遮音壁の音響特性 p.76
5.4.3 2重Y型遮音壁の騒音低減メカニズム p.78
5.5 2重Y型遮音壁の騒音低減効果 p.87
5.5.1 フィールド試験 p.87
5.5.2 計算による騒音低減効果 p.89
5.5.3 実際の道路における騒音低減効果 p.91
5.6 まとめ p.92

6 遮音壁3 反共鳴管付小型遮音壁の開発 p.94
6.1 本章の概要 p.94
6.2 小型遮音壁の音響設計 p.95
6.2.1 五角形形状の音響特性 p.95
6.2.2 反共鳴管付小型遮音壁の音響特性 p.97
6.3 小型遮音壁の騒音低減効果 p.101
6.3.1 計算による騒音低減効果予測 p.101
6.3.2 スピーカ試験結果 p.102
6.3.3 実際の道路における騒音低減効果 p.104
6.3.4 効果予測式 p.108
6.4 まとめ p.110

7 結論 p.112
7.1 まとめ p.112
7.2 今後の課題 p.113

付. 境界要素法による遮音壁の計算について p.115
1. 鉛直遮音壁の周波数特性 p.115
2. 回折音変動のメカニズム p.116
3. 音源側壁面の吸音の効果 p.116
4. 新型遮音壁開発用計算モデルについて p.117

 近年、車両の大型化・高速化、環境意識の高まりなどにより、道路交通騒音の低減が強く求められている。環境基準の達成率の低さ、また、道路交通騒音の訴訟に対する判決などを見ても、迅速な対策が必要といえる。道路交通騒音の低減対策は、音源対策と伝播経路対策に大別される。音源である自動車騒音は、エンジン音、排気音など車体側騒音の対策が進んだこともあり、タイヤの占める割合が、定常走行時に60%から80%と非常に大きくなっている。タイヤの低騒音化は、低燃費、安全性などの他性能と相反する面もあり、大幅な改善は困難な状況にある。その中で、低騒音舗装が密粒度舗装に対して3dB~5dBの騒音低減効果が確認されているなど、音源対策として舗装に求められる役割は非常に大きい。
一方、伝播経路対策としては、遮音壁が広く用いられている。しかし、騒音低減要求の増大に伴い、大型化が進み、日照、コストなどの面から低い高さで大きな騒音低減効果を有する遮音壁が求められている。また、遮音壁、低騒音舗装ともに、高い周波数での騒音低減効果が大きく、結果として低い周波数が残り、そのまま併用しても、大きな騒音低減効果を得ることは難しい。
以上のような状況に鑑み、本研究は、舗装、遮音壁を総合的に捉え最適に組み合わせた道路交通騒音の低減対策を提案することを目的とする。
はじめに、排水性舗装と併用する低い周波数から効果を発揮する遮音壁として、Y型遮音壁の先端を再分岐させた2重Y型遮音壁を提案する。同遮音壁は、
(1)Y型壁に沿った伝播の抑制
(2)回折点における反射波と直接波との干渉による音圧レベル低減に伴う回折音低減
の2つのメカニズムにより、通常型遮音壁に比べ、低い周波数から大きな騒音低減効果を有することが、境界要素法に基づく音場計算(可視化)、スピーカを用いたフィールド試験を通じて確認された。さらに、実際の道路における効果確認実験により、道路交通騒音に対して、同じ高さの通常型遮音壁と比較して、3dB以上の効果を有することが、確認された。これは、高さ5mの2重Y型遮音壁が、高さ9m~11mの通常型遮音壁に相当することを意味する。
次に、2重Y型遮音壁は、幅2mと大きく、建築限界、上空占有などの面から、適用範囲が限られる。そこで、
上記メカニズムをベースに、2重Y型遮音壁の五角形部分の騒音低減特性に着目し、反共鳴管を追加することにより、幅0.5mと小型化しつつ低い周波数から低減効果を有する反共鳴管付き小型遮音壁を提案する。同遮音壁は、実際の道路における測定において、約2dBの騒音低減効果が確認された。同遮音壁は、従来の改良型遮音壁と異なり、吸音材を使用しない。このため、透明材料を用いることによる透光性の確保も可能であり、壁高さの低減以上に日照性の確保される。
 以上、遮音壁と低騒音舗装を組み合わせた最適な道路交通騒音低減法を提案する。

本論文は、1章から7章の章立てで構成されており、各章の概要は以下に示すとおりである。
第1章では、道路交通騒音対策の現状について概要を述べるとともに、研究対象であるタイヤ、低騒音舗装、遮音壁について整理し、本研究の目的及び位置づけを明確にする。
第2章では、タイヤ騒音の発生メカニズム、低騒音化技術の現状について、整理する。タイヤ騒音の発生メカニズムは、パターン溝共鳴音、パターン加振音などの形で解明されているが、大幅な低騒音化は実現されていない。このため、タイヤ道路騒音の低減には、舗装側での対策が重要であり、発生メカニズムから見た舗装の低騒音化の方向を示す。
第3章では、低騒音舗装の騒音低減効果とその特徴を測定結果に基づき示し、前章に示した方向との対応付けを行う。併せて、ポーラス・アスファルトの音響特性、騒音低減効果の評価方法について、これまでの検討を通じて得られた知見をまとめる。
第4章では、はじめに、境界要素法を用いた計算により、低騒音舗装と遮音壁の騒音低減効果の関係を求め、低騒音舗装と併用する新型遮音壁に対して、低い周波数からの騒音低減効果が要求されることを明確にする。続いて、低騒音舗装と併用する遮音壁として2重Y型遮音壁を提案する。境界要素法を用いた計算に基づく同遮音壁の騒音低減メカニズム、実際の道路における確認実験などによって確認された騒音低減効果について報告する。
第5章では、前章で示した2重Y型遮音壁のメカニズムに基づき小型化した、反共鳴管付き小型遮音壁を提案し、そのメカニズムと実際の道路などで確認した騒音低減効果について報告する。
第6章では、通常用いられている先端が音源側に湾曲した単一遮音壁が、湾曲によって、回折音が増加することを示すとともに、先端部の改良による回折音低減について報告する。
最後に第7章では、以上で得られた知見をまとめ、さらに今後の検討課題についてとりまとめ結論する。

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