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開発途上国における廃棄物管理の現状とセルフサスティナブル改善戦略に関する研究

氏名 四蔵 茂雄
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第226号
学位授与の日付 平成16年7月14日
学位論文題目 開発途上国における廃棄物管理の現状とセルフサスティナブル改善戦略に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 原田 秀樹
 副査 教授 藤田 昌一
 副査 助教授 大橋 晶良
 副査 助教授 季 杰東
 副査 福岡大学 教授 松藤 康司

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目次

第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.2 研究の目的 p.3
 1.3 論文の構成 p.4
 第1章補注 p.5
 第1章参考文献 p.6

第2章 既往研究 p.7
 2.1 研究領域 p.7
 2.2 研究成果 -問題要因- p.9
 第2章補注 p.14
 第2章参考文献 p.14

第3章 廃棄物管理の事例研究 p.16
 3.1 緒論 p.16
 3.2 事例研究(1) -インド- p.17
 3.3 事例研究(2) -ネパール国カトマンズ市- p.32
 3.4 事例研究(3) -カンボジア国プノンペン市- p.48
 3.5 小括 p.60
 第3章補注 p.60
 第3章参考文献 p.61

第4章 廃棄物に関する量的考察 p.65
 4.1 緒論 p.65
 4.2 現在の廃棄物量 p.65
 4.3 廃棄物量と経済 p.66
 4.4 将来の廃棄物量 p.67
 4.5 小括 p.70
 第4章補注 p.71
 第4章参考文献 p.71

第5章 改善のアプローチ p.72
 5.1 緒論 p.72
 5.2 技術的対応 p.73
 5.3 低所得地区への対応 p.85
 5.4 効率的な援助のあり方 p.101
 5.5 小括 p.113
 第5章補注 p.114
 第5章参考文献 p.116

第6章 結論 p.122
 第6章参考文献 p.124

謝辞 p.125

 開発途上国では、不適切な都市廃棄物の管理に起因した公衆衛生の問題が深刻である。この問題は30年以上も前から国際社会の熱い関心を集めてきたが、未だ解決に至らず最も深刻な環境問題の一つとして途上国の人々を苦しめ続けている。人口の急激な増加、開発に対する途上国政府の姿勢、そして改善のための資金不足といった制約の中で、この問題を解決していくにはどうすればよいのか。これは21世紀の国際社会に科せられた大きな課題である。
 公衆衛生の改善はインフラ整備に負うところが少なくない。それ故、改善には資金は必要である。しかし、投入される資金を増やすことが唯一の問題解決の方法ではない。途上国には途上国の実情に合った方法が他にもあるはずである。本論文ではこのような認識の下、インドシナ諸国、南アジア諸国で筆者がこれまで行った調査事例を紹介しつつ、そこから得られた知見を踏まえ、途上国の改善戦略に必要な方向性に関わる幾つかの問題点について論じた。
まず第2章で、既往の調査・研究についてレビューした。主要な研究で扱われているトピックについて述べると共に、既往研究によって得られた成果から問題の要因を、表面的な要因(レベル1)、廃棄物管理体制内部の要因(レベル2)、体制外部の要因(レベル3)に分けて整理した。
第3章では、同様の問題を抱えている他の国の参考になることを期待し、筆者がこれまで行った調査から、インド国、ネパール国カトマンズ市ならびにカンボジア国プノンペン市の管理事例を報告した。インド国の事例では、新たな財源の必要性に言及すると共に、対外的な調整や政治的な手続きを伴わない比較的実行しやすいと思われる改善策を述べた。特に、人員管理とオペレーション管理の重要性を指摘した。カトマンズ市の事例では、収集作業と処分場管理方法の改善を図ることが重要であることを指摘した。また法律の運用や計画の実効性の確保、人員訓練の実施、情報収集、市民との連携の強化等も必要であることを述べた。プノンペン市の事例においては、収集作業と処分場管理に関する技術的課題の他に、業務委託のあり方を取り上げその問題点について論じた。1社独占のフランチャイズ方式は早急に見直す必要があることを指摘した。
第4章では、廃棄物管理における最も重要な管理ファクターである廃棄物量について考察した。多くの都市は現状でも100%の廃棄物を収集できない状況であること、そして今後の人口増加と経済成長により著しく廃棄物量が増加することを示した。
 第5章では、途上国の改善戦略に必要な方向性に関わる幾つかの問題点の中から、技術的対応、低所得地区への対応、そして効率的な援助のあり方について考えた。技術的対応については、廃棄物の嫌気性消化に着目し、アジア発展途上国への適用性と導入に伴う効用について検討した。その結果、これらの地域には普及に優れた条件が備わっていること、一方で技術オプションとしての焼却炉の採用は多くの国で時期尚早であること、廃棄物のエネルギー資源としての寄与は期待された程大きくはないが、家庭での利用に限定するとかなりの貢献が見込まれること、また現状の植林に対しては、比較的節約効果が期待されること等を結論として得た。
 低所得地区への対応においては、基礎情報の収集を目的に、インド国ムンバイ市のスラムを対象として、廃棄物に対する住民意識調査と住民の廃棄物処理行動の要因分析を行った。その結果、住民の廃棄物問題に対する深刻さの認識は、水やトイレ等の問題に比べると低いこと、住民は主に「コンテナーまでの距離」と「健康リスク認識の有無」によって、廃棄物をコンテナーまで持って行く、あるいは住居付近に投棄するという自らの処理行動を選択していることを明らかにした。さらに、健康リスクを認識しているという価値を距離尺度で表し、約100mと評価した。
 援助のあり方については、カトマンズ市におけるドイツの援助事例を取り上げ、援助国・被援助国双方の問題を考察した。援助国側の問題としては、現地の実情に適した援助が必要であることを、技術、組織、財政の観点から指摘した。また被援助国側の問題として、組織間の連携と当事者意識が不可欠であること、事前対策や教育対策などの廃棄物管理体制の枠を越えた取り組みが重要であることを指摘した。
 最後にまとめとして、今後の課題を述べた。本論文で取り上げた問題をさらに深化させること、そして、住民等との連携に根ざした廃棄物管理の具体的方法論を模索することが今後の課題であることを述べた。

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