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外乱オブザーバを含む二重ループサーボ系に関する研究

氏名 宮崎 敏昌
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第193号
学位授与の日付 平成11年3月25日
学位論文の題目 外乱オブザーバを含む二重ループサーボ系に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 大石 潔
 副査 教授 高橋 勲
 副査 助教授 近藤 正示
 副査 助教授 野口 敏彦
 副査 東京大学助教授 堀 洋一

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第1章 序論 p.1
 1.1 研究背景 p.1
 1.2 研究目的 p.5
 1.3 論文の構成 p.7

第2章 外乱オブザーバを含む従来のロバストサーボ系 p.11
 2.1 はじめに p.11
 2.2 外乱オブザーバとそのロバスト制御系 p.12
 2.3 H∞制御理論によるロバスト制御系 p.23
 2.4 既約分解表現を用いた2自由度制御系の設計 p.27
 2.5 外乱オブザーバを含む従来のロバストサーボ系の基本構造 p.30
 2.6 まとめ p.38

第3章 外乱オブザーバを含む二重ループサーボ系 p.41
 3.1 はじめに p.41
 3.2 外乱オブザーバを含む二重ループサーボ系の構造 p.42
 3.3 係数図法を用いた内部ループの設計 p.45
 3.4 混合感度問題に基づいたロバストな外部ループの設計 p.48
 3.5 観測ノイズを考慮した制御系の設計仕様 p.50
 3.6 外乱オブザーバを含む二重ループサーボ系の設計法 p.52
 3.7 まとめ p.56

第4章 低速領域での外乱抑圧特性を考慮したロバスト速度制御系 p.57
 4.1 はじめに p.57
 4.2 低速領域を含めた広範囲な速度領域での速度制御 p.58
 4.3 DCサーボモータシステムの既約分解表現 p.64
 4.4 実験システムとロバスト速度制御系の設計条件 p.67
 4.5 ロバスト制御系の設計と実現 p.70
 4.6 実験結果 p.74
 4.7 まとめ p.80

第5章 機械的パラメータ変動を有する2慣性共振系のロバスト速度制御 p.83
 5.1 はじめに p.83
 5.2 2慣性共振系の負荷速度制御 p.84
 5.3 ロバストな2自由度速度制御系の設計 p.88
 5.4 ロバスト速度制御系の設計結果 p.88
 5.5 シミュレーション結果 p.104
 5.6 まとめ p.120

第6章 ギアの非線形特性を考慮したロボットアームのロバスト制御 p.123
 6.1 はじめに p.123
 6.2 ギアの角度伝達誤差のモデル化 p.124
 6.3 非線形ギアモデルに基づく共振振動を考慮したロバスト速度制御系 p.134
 6.4 機械的パラメータの変動と共振現象を考慮したロバスト速度制御系 p.145
 6.5 パラメータ変動による速度応答と外乱抑制応答のシミュレーション結果 p.151
 6.6 まとめ p.156

第7章 結論 p.159
 7.1 本研究による成果 p.159
 7.2 今後の課題 p.164

付録A 既約分解表現による制御系の記述
付録B 既約分解表現による2自由度制御系

 近年、電動機システムは、ロボットマニピュレータの関節アクチュエータなど、産業用アクチュエータとして広く用いられている。産業用ロボットの高精度化や高性能化に伴い、電動機システムに対する高性能な速度及び位置制御の実現が必要となってきた。特に、電動機システムのパラメータやシステムに入力される外乱トルクは、ロボットの構造やその姿勢によってダイナミックに変化するため、汎用の電動機制御系はこれらの影響を考慮しなければならない。このため、様々な外乱トルクの印加による出力偏差の補償と、制御系のパラメータ変動に対して制御系の挙動を安定させるような、ロバストな制御系を構成することが必要となる。産業用アクチュエータの制御系は、設計やその変更が簡単である必要がある。このため、これまでは、簡単で高い外乱抑圧能力を持つ外乱オブザーバを含む制御系を用いることが多かった。しかしながら、制御対象の大きなパラメータ変動に対して安定性を維持できなかったり、外乱抑圧の特性を悪化させるなどの問題点を持っているため、高性能なロバスト制御が由難となってしまう。一方、これまでに提案された高性能なロバスト制御系は、その設計が複雑であったり、設計変更が容易ではないなどの問題点を持つため、産業用アクチュエータの制御に用いるためには、問題点を含んでいた。
 本研究の目的は、産業用アクチュエータの制御に用いることができるような、高性能で見通しの良いロバスト制御系の構成とその設計法を提案することである。そのために、先ず、産業用アクチュエータの補償器として必要な条件を以下の4つにまとめる。
 (1) 制御対象を安定化することができる
 (2) 外乱オブザーバによる補償器を用いてロバスト性を満足させる
 (3) ロバスト性については混合感度問題と同じ制約条件を満足させる
 (4) 制御系の閉ループ極を直接指定できる
 本研究では、上記の4つの条件を満たすような高性能で新しい制御系を構成する。このために、一般的な2自由度制御系を変形し、外乱オブザーバを含む二重ループ構造を持つサーボ系を構成して設計を行う。これまでに、外乱オブザーバを含む2自由度制御系をユーラのパラメトリゼーションや、新たに提案するパラメトリゼーションを用いて構成したロバスト制御系が提案されている。しかしながら、安定化補償器の構成次第ではオブザーバの問題点を完全に解決することが困難であった。これまでに用いられてきた外乱オブザーバ補償を用いたロバスト制御系では、外乱オブザーバの特長である外乱抑圧特性の良さを生かすと同時に、外乱オブザーバの問題点であったロバスト安定性を持つように設計することが難しかった。これは、外乱オブザーバ補償による制御では制御対象の安定化を図ることができないことと、外乱抑圧特性を良くするためにできるだけ速い制御を行わなければならなかったことが大きな原因になっていた。
 そこで、本研究では、外乱オブザーバと状態フィードバックにより制御系を構成することを提案する。新しく構成する制御系をよりシステマティック且つロバストに設計するために、状態フィードバックを内側に、外乱オブザーバを外側のループに持つような構造とする。これにより、外乱抑圧特性を維持したまま、制御対象のパラメータ変動の影響を設計の条件として明確な形で取り入れることができるようになり、外乱オブザーバを含んだ新しい構造のロバスト制御系として実現することができるようになる。また、外乱オブザーバを外側のループに置くことにより、外乱抑圧特性の実現を内側のループとの併用で実現できるようになり、外乱オブザーバの制御の速さを緩和することができるようになった。これにより、パラメータ変動に対して有効に働くロバストな制御系を構成することができる。本研究で提案する制御系の特徴を以下にまとめる。
 (1) 外乱オブザーバによる外部ルループと既約分解表現による内部ループからなる2重ループの構造である。
 (2) 既約分解表現による内部ループは、振動的又は不安定な極を持つ制御対象の安定化を行う。
 (3) 外乱オブザーバによる外部ループは、制御系の外乱抑圧特性とロバスト安定性を決定する。
 (4) 外乱オブザーバのローパスフィルタによりロバスト安定条件を直接適用している。
 (5) 制御系の外乱抑圧特性は、内部ループと外部ループの各々の閉ループ特性の積で表される。
 本論文は、7章から構成されており、1章で本研究の背景と目的を述べ、2章では従来から提案されている二重ループサーボ系をまとめる。3章では本研究において提案する新しい二重ループサーボ系の構成法とロバストな設計法にいて述べる。4章と5章と6章においては、新しく提案した2自由度制御系の構成法を用いて産業界において問題とされている制御対象に対するロバストな2自由度制御系を構成し、実験またはシミュレーション結果によって、その有効性を確認する。最後に7章において、本論文をまとめる。

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