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高臨界温度YBCO高周波デバイスに関する研究

氏名 陳 健
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第62号
学位授与の日付 平成4年3月25日
学位論文の題目 高臨界温度YBCO高周波デバイスに関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 濱崎 勝義
 副査 教授 弘津 禎彦
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 高田 雅介
 副査 東北大学 教授 山下 努

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目次
第一章 序論 p.1
1-1 本研究の背景 p.1
1-2 本研究の目的と内容 p.8
第二章 YBCO薄膜用バイクリスタル基板及びYBCOジョセフソン粒界接合の作製 p.10
2-1 バイクリスタル基板及びYBCO薄膜の作製 p.10
2-1-1 MOCVD法及び自然粒界 p.10
2-1-2 バイクリスタル基板の作製 p.16
2-1-3 エピタキシャル成膜法及び人工粒界 p.20
2-2 YBCO薄膜のエッチング法 p.23
2-2-1 ウエットエッチング法 p.30
2-2-2 ドライエッチング法 p.31
2-3 第二章のまとめ p.40
第三章 YBCOジョセフソン粒界接合の直流及び高周波特性 p.43
3-1 自然粒界接合の直流特性 p.44
3-1-1 4.2KでのI-V特性 p.44
3-1-2 77KでのI-V特性 p.48
3-1-3 Ic,RN温度特性 p.49
3-1-4 IcRN積の評価 p.52
3-2 自然粒界接合の高周波特性 p.55
3-2-1 マウント及びボウタイアンテナ p.55
3-2-2 4.2Kでの電磁波誘起ステップ p.59
3-2-3 77Kでの電磁波誘起ステップ p.61
3-3 RSJモデルによる電磁波誘起ステップ特性の解析 p.64
3-3-1 RSJモデル p.64
3-3-2 カオティクな特性及びCJの評価 p.66
3-3-3 直流I-V特性の解析 p.70
3-3-4 電磁波誘起ステップ高さの電力依存性の解析 p.71
3-4 人工粒界接合の直流及び高周波特性 p.74
3-4-1 膜質及び臨界電流密度(JC)の評価 p.74
3-4-2 77KでのI-V特性 p.79
3-4-3 4.2KでのI-V特性 p.82
3-5 第三章のまとめ p.85
第四章 77KにおけるYBCOジョセフソン粒界接合の高周波ミクシング特性 p.87
4-1 ジョセフソンミクサの動作原理及び測定システムの構成 p.87
4-1-1 ジョセフソンミクサの動作原理 p.87
4-1-2 測定システムの構成 p.89
4-2 基本波ミクシング特性 p.90
4-2-1 基礎特性 p.90
4-2-2 中間周波出力の局部発振電力及び信号電力依存性 p.93
4-3 ハーモニックミクシング特性 p.96
4-3-1 ハーモニックの次数特性 p.96
4-3-2 中間周波出力の局部発振電力及び信号電力依存性 p.100
4-4 第四章のまとめ p.105
第五章 総括 p.106
参考文献 p.110
記号表 p.116
謝辞 p.119
本研究に関する公表論文 p.120

 近年、電波天文の分野について、低ノイズかつ高感度な電磁波受信機を用いたミリ波ないしサブミリ波帯における星間分子スペクトルの分光学的測定が行われている。この成果として、暗黒星雲や巨大分子雲等の観測が進み、特に、恒星の形成過程が解明されつつある。しかし、更に多くの分子スペクトルを観測するためには、超伝導デバイスを用いたサブミリ波帯における高感度のセンサが必要であり、この帯域での低ノイズのデバイスおよび高感度電磁波受信機の開発が現在活発に行われている。
 本研究では、1986年に発見された高臨界温度(高温)YBCO超伝導体を用いて、高周波帯における低ノイズかつ高感度な集積化電磁波受信機の開発を目的とし、その予備段階として、受信機を構成する中心素子の一つとなるジョセフソン粒界接合の作製と、直流及び高周波帯での基礎的動作特性について詳細に検討している。
 本論文は「高臨界温度YBCO高周波デバイスに関する研究」と題し、次の五つの章より構成される。
 第一章「序論」では、高温超伝導体を用いた高周波デバイスを開発する意義について述べている。また、超伝導高周波デバイスの中でも、特に低いノイズ温度と優れたハーモニックミクシング特性を示すジョセフソンミクサの研究状況を紹介し、このミクサの中心素子となるジョセフソン接合の作製法について述べている。
 第二章「YBCO薄膜用バイクリスタル基板及びYBCOジョセフソン粒界接合の作製」では、まず、MOCVD法によりMgO単結晶基板上に成膜した多結晶膜の構造をXRD、SEM及びTEM等の分析法により解析している。その結果、膜中には傾角粒界が自然に形成されており、これを利用すれば、YBCOジョセフソン粒界接合を作りうることを明らかにしている。更に、これらの結果に基づいて、粒界接合特性の再現性をよくするために、Siバイクリスタル基板を試作し、その上Y2O3/YSZのバッファー層を介してYBCOを成膜し、YBCO傾角粒界を人工的に作製できることを初めて実証している。また、YBCO傾角粒界をもつ薄膜を用いたブリッジ型ジョセフソン接合の作製法として希釈リン酸によるウェットエッチング法、及びエキシマレーザによる空気中でのドライエッチング法を比較検討し、レーザドライエッチング法がYBCOブリッジ型接合の作製法として有効であることを明らかにしている。
 第三章「YBCOジョセフソン粒界接合の直流及び高周波特性」では作製した粒界接合の直流、及び高周波応答特性の温度依存性を調べ、接合の臨界電流(Ic)及び常伝導抵抗(RN)の温度特性を評価している。その結果をもとに、これら弱接合部となる傾角粒界の状態について種々検討している。また、ミクサの遮断周波数を決定する一つのパラメーターであるIcRN積の評価から、これらの接合は4.2Kで少なくとも約1.5THZまで動作することを予想し、マイクロ波及びミリ波の照射実験結果から、4.2Kで約2.5THZ、77Kで約600GHZのサブミリ波まで動作することを確認している。更に、定電流源RSJモデルを用いて、電磁波誘起ステップの高さを定量的に評価し、4.2K及び77Kにおける実験結果と解析結果はよい一致を示し、RSJモデルによって高温ジョセフソンミクサの設計、および動作解析が行えることを明らかにしている。
 第四章「77KにおけるYBCOジョセフソン粒界接合の高周波ミクシング特性」では、マイクロ波帯からミリ波帯でのヘテロダインミクシング実験および検討を行っている。その結果、ジョセフソンミクシング特性はRSJモデルによるアナログシミュレーションや数値計算結果とよく一致している。また、77Kにおいて30次までのハーモニックミクシング動作ができたことから、YBCO粒界接合はサブミリ波帯でのジョセフソンミクサ素子として有望であることを結論づけている。
 第五章「総括」では、各章の主な結果を要約し、残された問題点及び今後の研究課題について検討している。

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