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ジアルキルアミド基を有する1,3-ジエン類の合成と重合に関する研究

氏名 八重樫 敬之
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第306号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 ジアルキルアミド基を有する1,3-ジエン類の合成と重合に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 竹中 克彦
 副査 教授 塩見 友雄
 副査 教授 西口 郁三
 副査 教授 五十野 善信
 副査 助教授 河原 成元
 副査 助教授 木村 悟隆

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 はじめに p.2
1.2 2-置換-1,3-ブタジエンの安定性 p.3
1.3 2位にカルボニル基を有するポリ1,3ブタジエン誘導体の合成 p.6
1.4 アミド基を有するモノマーの重合反応性 p.7
1.5 ポリ(N,N-ジアルキルアクリルアミド)類の特性 p.9
1.6 本研究の位置づけ p.11
参考文献 p.14

第2章 ジアルキルアミド基を有する1,3ブタジエン誘導体の合成と最安定コンホメーションの解析 p.17
2.1 はじめに p.18
2.2 実験項 p.20
 2.2.1 試薬の精製 p.20
 2.2.2 N,Nジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミドの合成 p.21
 2.2.2.1 3-メトキシプロピンの合成(step1) p.21
 2.2.2.2 4-(N,Nジメチルアミノ)-1-メトキシ-2-ブチンの合成(step2) p.22
 2.2.2.3 1-(N,Nジメチルアミノ)-2,3-ブタジエンの合成(step3) p.22
 2.2.2.4 N,Nジメチル-2-メチレン-3-ブテンアミド(DEA)の合成(step4) p.23
 2.2.3 使用した分析機器 p.27
2.3 結果と考察 p.28
 2.3.1 モノマーの最安定コンホメーションの検討 p.28
参考文献 p.34

第3章 ジアルキルアミド基を有する1,3-ブタジエン誘導体のラジカル単独重合 p.35
3.1 はじめに p.36
3.2 実験項 p.37
 3.2.1 試薬の精製 p.37
 3.2.2 N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミドのラジカル重合 p.37
 3.2.2.1 開始剤にAIBNを用いた重合 p.37
 3.2.2.2 開始剤にBPOを用いた重合 p.38
 3.2.2.3 開始剤にBPO/DMA(レドックス系開始剤)を用いた重合 p.38
 3.2.3 転化率の計算法 p.39
 3.2.4 使用した分析機器 p.40
3.3 結果と考察 p.42
 3.3.1 N,Nジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミドのラジカル重合の動力学 p.42
 3.3.1.1 N,Nジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミドの熱重合性 p.42
 3.3.1.2 転化率の重合時間依存性 p.42
 3.3.1.3 初期重合速度:Rpのモノマー濃度および開始剤濃度依存性 p.52
 3.3.1.4 全重合の活性化エネルギーの評価 p.64
 3.3.1.5 重合溶媒の分子量および転化率への影響 p.70
 3.3.2 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の特性解析 p.72
 3.3.2.1 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の溶液挙動 p.72
 3.3.2.1.1 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の溶剤溶解性 p.72
 3.3.2.1.2 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の溶液中での挙動 p.74
 3.3.2.2 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の熱的性質 p.75
3.4 まとめ p.77
参考文献 p.79

第4章 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)のミクロ構造の解析 p.81
4.1 はじめに p.82
4.2 実験項 p.84
 4.2.1 試薬の精製 p.84
 4.2.2 1,4-ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド):poly(DEA)のモデル化合物の合成 p.84
 4.2.2.1 2-エチル-2-ヘキセン酸クロリドの合成 p.84
 4.2.2.2 N,N-ジエチル-2-エチル-2-へキセンアミドの合成 p.84
 4.2.3 tert-ブチルメルカプタンを用いたテロメリゼーション反応 p.85
 4.2.4 DEAの付加形式を解析するための低分子モデル化合物の合成 p.85
 4.2.4.1 N,N,N',N'-テトラエチル-2,5-ジブチルヘキサンジアミドの合成 p.86
 4.2.4.1.1 N,N,N',N'-テトラエチルヘキサンジアミドの合成 p.86
 4.2.4.1.2 N,N,N',N'-テトラエチル-2,5-ジブチルヘキサンジアミド(H-H モデル化合物)の合成 p.87
 4.2.5 使用した分析機器 p.89
4.3 結果と考察 p.90
 4.3.1 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)のミクロ構造の解析と重合条件によるミクロ構造の変化 p.90
 4.3.1.1 poly(DEA)のミクロ構造の解析 p.90
 4.3.1.2 重合条件によるミクロ構造の変化 p.93
 4.3.2 ラジカル重合における付加形式の解析 p.107
 4.3.2.1 テロメリゼーション法による付加形式の検討 p.107
 4.3.2.2 poly(DEA)の水素添加反応による付加形式の検討 p.121
4.4 まとめ p.131
参考文献 p.133

第5章 N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミドのラジカル共重合 p.135
5.1 はじめに p.136
5.2 実験項 p.137
 5.2.1 試薬の精製 p.137
 5.2.2 N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミドのラジカル共重合 p.137
 5.2.3 使用した分析機器 p.138
5.3 結果と考察 p.141
5.4 まとめ p.167
参考文献 p.168

第6章 ポリ(N,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の水素添加反応 p.169
6.1 はじめに p.170
6.2 実験項 p.171
 6.2.1 試薬の精製 p.171
 6.2.2 ポリ(N,N-ジエチル-2-メチレン-3-ブテンアミド):poly(DEA)の接触水素添加反応 p.173
 6.2.3 N,N-ジエチル-2-エチル-2-へキセンアミドの接触水素添加反応 p.173
 6.2.4 p-トルエンスルホニルヒドラジドを用いた水素添加反応 p.174
 6.2.5 使用した分析機器 p.174
6.3 結果及び考察 p.175
 6.3.1 Wilkinson触媒を用いたpoly(DEA)の接触水素添加反応 p.175
 6.3.2 種々の遷移金属触媒を用いたpoly(DEA)の接触水素添加反応 p.180
 6.3.3 p-トルエンスルホニルヒデラジド:TSHを用いたpoly(DEA)の水素添加反応 p.186
 6.3.4 水素添加したポリ(N,N-ジエチル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の熱的性質 p.189
6.4 まとめ p.190
参考文献 p.192

第7章 光学活性なアミド基を有するポリ1,3-ブタジエン誘導体の合成と応用 p.193
7.1 はじめに p.194
7.2 実験項 p.196
 7.2.1 試薬の合成 p.196
 7.2.1.1 L-2-ヒドロキシメチルピロリジンの合成 p.196
 7.2.1.2 L-N-(4-メトキシ-2-ブチニル)-2-トリメチルシロキシメチルピロリジン p.197
 7.2.1.3 L-N-(4-メトキシ-2-ブチニル)-2-メトキシメチルピロリジンの合成 p.197
 7.2.2 MPyのラジカル重合 p.201
 7.2.3 poly(MPy)を用いたプロリンの光学分割能の検討 p.201
 7.2.4 使用した分析機器 p.201
7.3 結果と考察 p.202
 7.3.1 得られたポリマーの水への溶解性の検討 p.202
 7.3.2 CDスペクトルによるpoly(MPy)の構造解析 p.203
 7.3.3 モノマーのエナンチオマー同士の共重合 p.204
 7.3.4 キラルモノマーとアキラルなモノマーの共重合 p.207
 7.3.5 pHの変化による高次構造への影響 p.210
 7.3.6 光学分割剤としての応用 p.211
7.4 まとめ p.214
参考文献 p.215

第8章 総括 p.217

付録
 A.1 ポリ(N(2-メチレン-3-ブテノイル)-N'-メチルプペラジン)の加水分解反応 p.224

発表論文リスト p.229

謝辞 p.231

2位に官能基を有する1,3-ブタジエン誘導体は、官能基の種類により、通常の重合条件では共役ジエンとアルケンとの反応であるDiels-Alder反応が優先的におこり、モノマーとして単離することが困難になる場合がある。官能基として電子吸引性基であるカルボニル基を選択した場合には、特にこの傾向が強く、一般に対応するモノマーを得ることはできない。しかしながら、Alperは強力な電子吸引性基であるジエチルアミドカルボニル基を持つブタジエン誘導体は安定に存在することを報告した。彼らはこれをDiels-Alder反応のメカニズム解析のために合成したが、このモノマーの重合に関する報告は一切なされていない。したがって、カルボニル基によりジエン骨格の重合反応性がどのように影響を受けるのかが非常に興味深い問題となる。
本論文では、カルボニル基がジエン骨格に直接置換しているにも関わらず、安定に存在できるN,N-ジアルキル-2-メチレン-3-ブテンアミドを対象とし、これのラジカル重合挙動と生成ポリマーの応用について考察した。
第1章では、本研究の位置づけを行うとともに、今までに報告例のない2位にジアルキルアミド基を有する1,3-ブタジエン誘導体モノマーの重合する意義について述べた。
第2章では、種々のアルキル置換基を有する5種類のモノマーの合成とこれの最安定コンホメーションを解析した。ジアルキルアミド基を有するモノマーの最も安定なコンホメーションは、ブタジエン骨格とカルボニル基が大きくねじれた構造であり、アミドカルボニル基がブタジエン骨格に対して共役できる位置にありながら、実質的には共役に関与しないことを明らかにした。
第3章では、2位に様々なジアルキルアミド基を有する1,3-ブタジエン誘導体のラジカル単独重合挙動について示した。初期重合速度の開始剤濃度およびモノマー濃度依存性について検討すると、いずれのモノマーにおいても、初期重合速度は開始剤濃度の0.5次に、モノマー濃度の1次に比例した。これにより、この重合系では副反応を伴わない通常のラジカル機構で重合が進行していることが明らかとなった。アレニウスプロットより求めた全重合の活性化エネルギーを比較すると、環状アミド型のモノマーのほうが非環状のそれに比べて高くなることを見出した。
第4章では、ジエンモノマーの重合において最も重要な項目の一つであるミクロ構造の解析と、モノマーの末端活性種に対する付加形式について解析した。得られたポリマーのミクロ構造は、アミドのアルキル基によらず、ほぼ100% 1,4-構造を有していることを明らかにした。テロメリゼーション法による1:1付加物の構造解析、および主鎖の二重結合のみを水素添加したポリマーの構造解析から、モノマーの末端活性種に対する付加形式は1,4-付加、および4,1-付加が混在していることがわかった。
第5章では、様々なジアルキルアミド基を有する1,3-ブタジエン誘導体とスチレンとのラジカル共重合を行い、その共重合挙動について考察した。得られた共重合体は仕込みモノマー組成よりも多量のブタジエン誘導体が取り込まれており、ジアルキルアミド型のモノマーはスチレンに比べて高い反応性を持つことがわかった。モノマーの共鳴安定化の指標であるAlfrey-PriceのQ値はQ=8~12の値をとり、同じジエンモノマーであるブタジエン(Q=1.70)やイソプレン(Q=1.99)のそれと比べると、本研究で合成したアミド基を有するモノマーは非常に大きなQ値を示すことが明らかとなった。
第6章では、ポリ(N,N-ジエチル-2-メチレン-3-ブテンアミド)の水素添加反応を試みた。触媒としてWilkinson錯体(RhCl(PPh3)3)を用い、水素加圧下で接触水素添加反応を行うと、溶媒の選択により大きく反応性が異なり、エタノール溶媒中で反応を行うと主鎖部分をほぼ定量的に水素添加反応が進行し、対応するポリオレフィンを得ることに成功した。遷移金属触媒の種類による水素添加率の変化について検討すると、傾向として均一系触媒のほうが不均一系触媒を用いたときに比べてより温和な条件で水素添加され、特に均一系触媒であるRuClH(CO)(PPh3)3触媒を用いた場合、オレフィン部分に対してわずか5mol%で主鎖の二重結合部分を定量的に水素添加できることを見出した。一方、アミドカルボニル基の二重結合部分はいずれの触媒を用いても還元できなかった。
第7章では、側鎖にプロリンから誘導した光学活性なアミド基を有する1,3-ブタジエン誘導体: MPyを合成し、側鎖の不斉源がラジカル重合に及ぼす影響について述べた。エナンチオマー同士のラジカル共重合、ならびにキラルなモノマーとアキラルなモノマーの共重合を行い、キラル炭素の存在が生成ポリマーの高次構造に与える影響を検討した。また、poly(MPy)のプロリンへの光学分割剤としての応用についても検討した。

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