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実験力学的手法による応力拡大係数の解析に関する研究

氏名 黒崎 茂
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第217号
学位授与の日付 平成16年3月25日
学位論文題目 実験力学的手法による応力拡大係数の解析に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 武藤 睦治
 副査 教授 栗田 政則
 副査 教授 古口 日出男
 副査 助教授 井原 郁夫
 副査 長岡技術科学大学 名誉教授 矢田 敏夫

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 本研究の背景 p.2
1.2 過去に行われている応力拡大係数の実験解析方法 p.4
1.3 本研究で提案する応力拡大係数の実験解析方法の特徴 p.7
1.4 本研究の目的 p.9
1.5 本論文の構成 p.10
第2章 亀裂先端応力・ひずみ場 p.12
2.1 緒言 p.13
2.2 亀裂先端部の応力成分式 p.13
2.3 亀裂先端部の領域(1)部分 p.15
 2.3.1 モード1開口型負荷 p.15
 2.3.2 モード2せん断型負荷 p.16
2.4 亀裂先端部の領域(2)部分 p.17
 2.4.1 モード1開口型負荷 p.17
 2.4.2 モード2せん断型負荷 p.19
2.5 混合モード(1+2)における応力・ひずみ場 p.20
2.6 亀裂先端部の塑性域 p.21
2.7 亀裂先端部の特性 p.22
 2.7.1 亀裂先端部の厳密解と級数項の関係 p.22
 2.7.2 亀裂と切り欠き p.23
2.8 緒言 p.24
第3章 モード1応力拡大係数K1の解析法 p.25
3.1 面内単純引張荷重下のモード1応力拡大係数K1の実験解析法 p.26
 3.1.1 緒言 p.26
 3.1.2 応力拡大係数の解析法 p.26
 (1)亀裂先端のひずみ成分 p.26
 (2)応力拡大係数K1の解析式の誘導 p.27
 (3)ひずみ値からのK値の直線外挿方法 p.28
 3.1.3 応力拡大係数の測定実験 p.29
 (1)使用ひずみゲージ p.29
 (2)試験片および試験方法 p.30
 3.1.4 実験結果および考察 p.31
 (1)ひずみゲージの値の信頼性 p.31
 (1)ひずみゲージの有限長補正 p.31
 (2)試験片表裏ひずみ p.32
 (2)片側亀裂試験片(SECT) p.33
 (3)中央亀裂試験片(CCT10) p.34
 (4)CT試験片 p.35
 (5)実験値と解析値との比較 p.36
 3.1.5 結言 p.37
3.2 面外曲げ荷重下のモード1応力拡大係数K1の実験解析法 p.39
 3.2.1 緒言 p.39
 3.2.2 面外単純曲げを受ける亀裂先端部のひずみ成分 p.39
 3.2.3 ひずみゲージによるK値解析方法 p.41
 (1)1点ゲージ法 p.41
 (2)5点ゲージ法 p.41
 3.2.4 実験方法 p.42
 3.2.5 実験結果および考察 p.43
 (1)片側縁亀裂試験片 p.43
 (2)両縁亀裂試験片 p.45
 3.2.6 結言 p.47
第4章 モード2応力拡大係数K2の解析方法 p.48
4.1 2軸直交型ひずみゲージによるモード2応力拡大係数解析方法 p.48
 4.1.1 まえがき p.49
 4.1.2 亀裂先端部のひずみ成分 p.50
 4.1.3 ひずみゲージによる解析方法 p.51
 4.1.4 有限要素法による解析 p.52
 (1)有限要素モデル p.52
 (2)有限要素解析結果 p.53
 4.1.5 実験方法 p.54
 4.1.6 実験結果および考察 p.56
 4.1.7 結言 p.59
4.2 5連式せん断ひずみゲージを利用した場合 p.60
 4.2.1 まえがき p.60
 4.2.2 亀裂先端部のせん断ひずみ成分 p.61
 4.2.3 ひずみゲージによるK2解析方法 p.61
 (1)1枚ゲージによる解析式 p.61
 (2)複数枚ゲージによる解析式 p.62
 4.2.4 実験方法 p.62
 (1)使用5連式せん断ひずみゲージ p.62
 (2)試験片および実験方法 p.62
 4.2.5 実験結果 p.63
 4.2.6 まとめ p.65
第5章 混合モード応力拡大係数(K1,K2)の解析法 p.66
5.1 単軸5連式ひずみゲージによる混合モード応力拡大係数(K1,K2)解析 p.67
 5.1.1 まえがき p.67
 5.1.2 混合モード応力拡大係数の解析方法 p.68
 (1)混合モード下での亀裂先端近傍のひずみ成分(εx,εy) p.68
 (2)並列と直列の単軸五連式ゲージ併用によるK1,K2の外挿方法 p.69
 5.1.3 実験方法 p.70
 5.1.4 実験結果および考察 p.72
 (1)荷重-ひずみ線図 p.72
 (2)外挿法の実験例(θ=45°の場合) p.73
 (3)実験値と解析値との比較 p.73
 5.1.5 結言 p.76
5.2 二軸五連式ひずみゲージによる混合モード応力拡大係数(K1,K2)解析 p.77
 5.2.1 はじめに p.77
 5.2.2 混合モードK1,K2の解析方法 p.78
 (1)混合モード荷重下の亀裂先端近傍のひずみ成分εx,εy p.78
 (2)ひずみ成分によるK1,K2の定式化 p.79
 5.2.3 応力拡大係数の測定実験 p.80
 (1)使用ひずみゲージ p.80
 (2)実験方法 p.81
 5.2.4 実験結果および考察 p.82
 5.2.5 結言 p.83
第6章 結論 p.84
謝辞 p.90

本研究は、き裂部材の破壊力学パラメータである「応力拡大係数(K値)」を、実験力学的に解析する手法について研究したものである。特に本研究では、実験的にK値を解析する方法として、現場で最も多く用いられているひずみゲージを用いて各種解析方法を考案した。実際に実構造部材に生じたき裂を想定して、き裂先端部近傍にひずみゲージを貼り付け、ひずみ測定を行う。ひずみ測定結果から、本研究で提案した方法により応力拡大係数を解析することができる。このように、本研究は、ひずみゲージを使った従来の実験力学手法が、そのまま利用でき、破壊力学を現場で利用できる技術を目指した研究である。
第1章では、(1)本研究の背景、(2)過去に行われたK値解析方法、(3)本研究の解析方法の特徴と(4)目的とを示した。実構造物中に検出されたき裂の評価を、破壊力学を用いて評価する場合、必ず破壊力学パラメータである応力拡大係数を調べなければならない。本研究では、そのような場合に適用できる新たな技術といえる。そこで現場で最も一般的に使用されている「ひずみゲージ」を使用したK値解析技術を開発することを試みた。特に特殊なゲージを開発するのではなく、安価で入手しやすい市販のひずみゲージを使うことにより、誰でもできる実験力学解析法を目標とした。(2)過去に行われたK値解析方法を5件説明している。(3)の本研究の特徴については、簡単に特徴を述べた。(4)の目的については、4項目を掲げて示した。
第2章では、き裂先端部の応力とひずみ式を示した。特に開口モードIとせん断モードIIの負荷が作用した場合について、それぞれ式を示した。

き裂先端部の応力とひずみ式は、き裂先端部から着目点までの距離の級数で表される。ここでは、き裂から最も近い領域(1)と、次に近い領域(2)とに分けて、応力とひずみ式を級数展開した形で示した。モードI+IIの混合モード負荷でのひずみ成分も示した。モードI負荷でのき裂先端付近の塑性域の形状についても示している。
第3章では、破壊力学で分類されているき裂への負荷モードで、モードI負荷について説明している。モードI応力拡大係数K1を実験力学的に求める方法を提案し、実験結果と理論値との比較を行っている。
き裂のモードI負荷は、(1)き裂を有する平板の純引張りと(2)き裂を有する帯板が面外曲げを受ける場合の二通りについて分けて示した。両者とも5連式ひずみゲージを用いている。
(1)の平板の純引張りでの応力拡大係数解析では、3種類のき裂を挿入した試験片を使い、単軸五連式ゲージを使い実験解析している。3種類とも理論値との誤差は、±10%の範囲内で得られている。
(2)のき裂を有する帯板の面外曲げによる応力拡大係数は、表面上のき裂先端部のK値を測定した。片側縁き裂と両側縁き裂の2種類の試験片を用いている。片側き裂試験片の結果は、五連式ゲージで理論値との誤差が±10%以内で得られている。両縁き裂試験片は、±10%から、はずれているが±20%以内で得られている。
第4章では、き裂がせん断負荷を受けた場合、破壊力学におけるモードII負荷状態における応力拡大係数を、実験力学的に求める方法を考案した。2種類の方法を提案した。第1は、二軸直交型ひずみゲージ1枚用いる方法である。第2の方法は、5連式せん断ひずみ測定用ゲージ(45°にゲージグリッドが傾き配置され5個一列に並んでいる)を用いる方法である。
第1の方法は、き裂延長上に±45°の角度で、二軸直交型ひずみゲージを貼り、測定する方法である。実際に実験を行い、理論値と比較を行った。このときの試験片は、き裂長さを各種変えたコンパクトシェアー試験片を用いた。
試験片のき裂長さを4種類変化させ、実験を行った。その結果き裂長さが短い2種類の試験片が、理論値との誤差±10%以内で得られた。き裂長さが長い方の2種類は、理論値との誤差は、±20%までで得られた。
第2の方法は、5連式せん断ひずみ測定用ゲージを用いた方法である。5枚のうち1枚のみを使用する1点ゲージ法の結果と5枚すべてを使用する5点ゲージ法を比較した。5点ゲージ法は、理論値との誤差が10%以内で得られた。1点ゲージ法は、わずかに10%外で得られた。
第5章では、破壊力学での開口モードIとせん断モードIIの両者が、き裂先端部に同時に混合して負荷した状態(混合モード)での応力拡大係数を、実験的に解析する方法を考案した。この章で説明する混合モード応力拡大係数を分離する方法は、二通りの方法について考案した。
第1方法は、ゲージ素子が直列と並列にならんだ単軸五連式ひずみゲージを、使った方法である。
第2方法は、直列と並列の両者が重ね合わさって二軸五連式ゲージとなった「二軸五連式ひずみゲージ」を使って求める方法である。
第1と第2の方法KIおよびKIIとも、理論値との誤差は、最大±10%から±20%で得られた。
第6章では、全体を通しての結論を示した。本研究で目標にした理論値との誤差は、±10%以内である。しかしすべてが誤差±10%以内で得られたわけではないが、最大±20%内では得られている。本研究で提案した方法は、現場で簡易的に使用できる方法であり、厳密な精度にこだわらなければ、十分実用的に使用できると考えられる。

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